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■2012年5月2日:極北のハンター

クリックして拡大  原題:HUNTER (1999年アメリカ)
 著者:ジェイムズ・バイロン・ハギンズ
     James Byron Huggins/1959- アメリカ生
 文庫初版:2000年5月31日 ハヤカワ文庫
 第2刷時価格:2000年6月15日 上下とも720円
 巻数:上下巻
 品番:NVハ23-1,2
 管理人読了日:2000年7月26日
 映画化:未
 映画題名:
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:未

本ブログでは一通り私のお気に入りの作家陣を紹介し終え、
後は単品のみや新進気鋭の作家の作品を適宜交えつつ、
大御所の作品の2番手を順に紹介しようと考えていた。

ところが、一人忘れていた。この一作は先に紹介せずにはいられない。

ジェイムズ・バイロン・ヒギンズという作家は怪物、と言うかモンスターを扱う作家として知られている。
聞いたところ妙な作家に思われそうだが、作品を通して著者の深い動物愛が感じられ、
私をして大変共感を覚えた。
この記事を書くまで邦訳済みのものは本作のみと思い込んでいたのだが、
調べると他に2作が邦訳済みとのこと。近いうちに入手したいと考えている。

本作に記入した日付でも上巻を7/19に読み終えた後、26日には下巻を読み終えている。
よほど面白かったのだろう。
文庫カバーの帯にスタローンが映画化するとあるが、影も形も無い。はて?である。


さて本書の主人公、ナサニエル・ハンターは人里離れて野生と同居する、犬ならぬ狼マスターである。
自然・環境研究家でもあり、アーティスト的な側面も持っており、そのため大変な金持ちである。

だが主人公以上に存在感が大きいのが、彼の飼い”犬”、狼のゴースト。
森で傷付き転がっていた”子犬”の時期のゴーストをハンターが拾って、
知人であり恩師でもある医学博士の元に運び、一命を取り留めたのだ。
それ以来、知力の高い動物であるゴーストは、命を救ってくれた恩とばかりハンターに仕えているのだ。
このゴーストの描写が可愛くて仕方が無い。著者の惜しみない愛情が感じられる。
こんな愛らしい狼なら、誰しもペットにしたいと思うだろう。

愛する狼と共に森で静かに幸せに暮らすハンターの元に、
ある日”政府の人間”と称する見るからに怪しげな連中が訪れる。

兵器への転用を視野に入れた”超”人造人間兵器が暴走したのでハンターに止めて欲しいというのだ。

何故ハンターに頼らねばならぬのか?
それは、その兵器がいわゆる生物・細菌兵器の類では無く、
良くあるクローン改造のような、人類創造に関わる禁断の施術によるものであり、
動物化した人間と言うか、超自然的な兵器だからだ。

山に入ったハンターは一人で放り出されたわけでは無く、
サポート要員として特殊部隊の1分隊を貸し出される。
ところがその分隊は”1分隊”と言っても既存の正規軍から1分隊を丸々引き抜いたのではなく、
言わば雑多な集団で統制に問題があり、日本人すらいた。
ハンターは彼らを単なるごろつきの集団、足手まといと考える。
事実、正体不明のモンスターを相手に隊員達は次々と命を落としていく。
まあそれは隊員達の落ち度では無く、彼らの練度そのものは”通常”の敵が相手であれば
頗る付きのはずであり、相手が相手だけに仕方が無かったのだが。

ともかく相手の正体が分からないのでは勝負にならぬ、と彼らは一旦後退する。
そのモンスターとは、見たところいにしえのホモテリウム(サーベルタイガーのようなもの)を強化させたような
モンスターで、人間と同じように考える能力を持つ、恐るべき怪物だった。

どうやら著者は、その昔この手の動物が、人類の遠い祖先の猿人の類を狩っていたのかもしれない、
という古生物学の論説にヒントを得たようだ。
動物が人間を日常的に捕食するーー考えるだに恐ろしい。そんな構想で書かれたのが本書だ。
そういう頭で読むと、この作品はとても恐ろしい物語に思えてくる。

彼等は多大な犠牲を払い、ゴーストまでも命を落とすが、何とかこの怪物を屠ることに成功する。
だが黒幕は、本来の目的とは異なる悪事を考えていた・・・


少々長くなったが紹介分を読むと想像が働き、読んでみたくなるというものだ。
私はここで触れた他の2作を読んでいないので、手を出してみようと思う。
色々なレビューを見ていると、ハギンズの本作以外の作品は何となくイマイチは予感はするのだが...

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