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■2012年8月17日:無法海域掃討作戦

クリックして拡大  原題:SHADOW FORCE (2011年イギリス)
 著者:マット・リン
     Matt Lynn/1940- イギリス生
 文庫初版:2012年2月25日 ソフトバンク文庫
 初版時価格:同上 900円
 巻数:単巻
 品番:リ1-3
 管理人読了日:2012年6月6日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:− 
 日本語DVD化:−

今回は新進気鋭の作家を紹介しよう。
マット・リンの本は既に同一の出版社から2作翻訳されており、本書は3作目である。
著者は最新の世界情勢に基づいたミステリ小説を著すことを得意とする。

前述の2作と本書は同一の主人公を中心とする傭兵部隊が世界の悪と戦う、
分かりやすいストーリーである。
第一作目の舞台はお約束のアフガン(アフガン、死の特殊部隊)。そして次は「暗黒の特殊作戦」アフリカ、
さらに3作目の本書はソマリアの海賊が相手である。
お題目は単純でも要所要所でポイントは押さえており、内容的にはソツがない。

ソマリアというと、もちろん海賊であり、日常的に彼らはメディアの格好の獲物にもなっている人気者である。
そうであっても、ソマリアという国はまともな人間ならだれが考えても文字通り無法地帯であり、
簡単には行かれない。いや、もとい、行きたいと思う人はいないだろう。
そんなわけだからソマリアというところがどんな国か?情勢はどうなっているのか?誰もが知りたいところであるのだが、
今言ったように簡単に取材に行ったり応じたりはしてくれない国だから、どうしたって分からない。
マット・リンはその答えを彼の実力たっぷりな筆の運びでもって提供してくれる。
アフガニスタンを題材にした小説は、本書の著者を始め結構出版されている。
しかし、ソマリアというのは無いよな〜、ということで全2作は既読だったこともあり私も本書に飛び付いた。


主人公のスティーヴはとあるPMC(民間軍事会社)に所属している。
前2作はその勤務先からの任務だったが、今回は趣向が異なり休暇先で事件に巻き込まれたことから物語が展開する。
ソマリアの海賊の統領が、悪の総元締めだから捕まえて、洗いざらい海賊のネットワーク等について吐かせたいので
生け捕りにせよ、との任務である。元々はイギリス政府の発案で、汚れ仕事は正規軍にはやらせたくないので、
スティーヴ達をハメて仕事を引き受けさせることにした。
ところがそんなストレートな話では面白くないので、マット・リンはそこに一捻り加えて、
良からぬ企みを抱く輩を登場させる。
スティーヴ達一行は結局はこの海賊の親玉に遭遇(会える)できるのだが、
それは予想に反して意外な出会いだった。
海賊の統領なんて、頬に傷のあるような礼儀知らずのヤクザ者で、北斗の拳のジャギみたいな奴を想像していたのだが、
予想を裏切ってそこにはしたたかなビジネスマンがいた。

本書を読んだら、絶対ソマリアに行きたくなくなるか、行けないという念を強くするかのどちらかである。
荒涼とした何もない土地で、あるのは海のみ。存在する産業としては、海賊稼業だけ。
こんな土地で生活するとしたら漁業くらいのものだが、それも海賊の主張では西洋国家に蹂躙されており、
食って行く役には立たないという。こんな国で、果たしてスティーヴ達は生き延びられるのか?
ましてや、作戦の成功など有り得るのだろうか?


このシリーズ、まだまだ続くようだが主人公のチーム(傭兵部隊)は1作毎に一人ずつ命を落としていくので、
第1作目のスタート時には10人いたメンバーが本書のエピローグ時には7人に減っており、
今回作戦に共同参加した、フランスの特殊部隊出身のアンリが今後どう絡んでくるのか興味あるところだが、
この先の冒険ではどうなるのか、要らぬ勘繰りをしてしまう。
まあそんな妄想に耽りながら次作の登場を待つのも悪くないだろう。

著名な作家であっても最新作がなかなか出版されない現在のミステリ小説市場に於いて、
人気の確保は至難の業である。特に、携帯電話やパソコン等他のおもちゃがあふれる日本では。
最近では読書専用の電子端末まであり、なんとも世知辛い世の中になった。
そんな中であっても著者が引き続き良作をものし、人気を維持してくれることを望む。

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