■2012年12月23日:傭兵チーム、極寒の地へ
原題:DECEMBER (2009年イギリス) | |
著者:ジェイムズ・スティール James Steel/ イギリス生 |
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文庫初版:2010年5月25日 ハヤカワ文庫 | |
再版時価格: 上/下とも:740円 | |
巻数:上下巻 | |
品番:Nス-19-1,2 | |
管理人読了日:2011年4月24日 | |
映画化:未 | |
映画題名:未 | |
映画主演俳優・女優:ー | |
日本語DVD化:ー |
冬物の小説としてはこれで・・・数えてみると今までに結構紹介してきたことに驚いたが、5作目にあたる。
内容的にはフォーサイスの「イコン」をなぞらえている様な感もあり、
ロシアで圧政を敷く大統領を倒して、今作の場合は「サッカー選手」という国民的英雄を起用して
クーデターを起こそうというストーリーは時折あるし、
それを実行するのが傭兵部隊でなくてはならない理由はよく分からないが、
(TV局が側面から脇を支えるのも)本書はそれなりに面白かった。
それは、この(作家としては)若いジェイムズ・スティールのエキサイティングな小説を書く才能だろう。
著者のことはある程度分かっているようだが、やはり作家によくある多芸なタイプで、
色々な職業をそつなくこなしてきたようだ。
広告代理店、教師(副校長)、ジャーナリスト・・・
英軍の将校教練体験部隊にも参加したらしい。
著者は本書の主人公、元英陸軍近衛騎兵連隊出身のアレックス・デヴァルー少佐を続投させ
シリーズ展開しているそうだが、ヒットした処女作の主人公を継続採用するあたりは新鋭の作家らしい。
傭兵を主人公に据えた小説が増えているが、時代のニーズだろう。
そしてイギリスの作家の小説だから、英軍出身の登場人物が多い。
実態として、それが傭兵の構成層として多いのかというと、それは分からない。
英軍(陸軍)自体はそれほど規模の大きな軍隊ではないから、
やはり40〜50万の兵力を抱える米軍出身者の方が多いだろう。
本作の特徴は、経歴の項でも述べたが、軍の事情も齧っているか
元々詳しいのか、軍事アクションの描写がリアルなこと。
特に2K22<ツングースカ>ーソビエト製の対空車両が活躍する小説など滅多にない。
他にも、著者は小火器にも造詣が深いことが窺える。
作品は読む手を休ませないタイプのアクション・ノヴェル。
クライマックスでは主人公達”傭兵”が悪代官である大統領を倒すのが早いか、
戦略爆撃機Tu-160"ブラック・ジャック"が首都モスクワに達して気化爆弾を落とすのが早いか、
息を継ぐ間もなく物語は展開する。
本作は、最近枯渇し出したエキサイティングな冒険小説を補う存在であると言える。