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■2013年1月15日:脱出空域

クリックして拡大  原題:SILENT ENEMY (2011年アメリカ)
 著者:トマス・W・ヤング
     Thomas W. Young/ アメリカ生
 文庫初版:2012年2月15日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 1,000円
 巻数:単刊
 品番:NVヤ-3-2
 管理人読了日:2012年8月19日
 映画化:未
 映画題名:未
 映画主演俳優・女優:ー
 日本語DVD化:ー

「脱出空域」は「脱出山脈」で衝撃デビューを果たしたトマス・W・ヤングの第2作。
第1作目は主人公で輸送機の航空士、マイケル・パースン空軍少佐と
陸軍のエージェント、ソフィア・ゴールド1等軍曹が撃墜されたC-130ハーキュリーズから、
捕虜を連れてアフガニスタンの険しい雪山をタリバンから逃れるストーリーだったが、
今度はその二人が輸送機の中で長時間缶詰にされる過程を描く。

パースン少佐は前作後の治療の間に訓練を受けてパイロットになっており、
他方ゴールドも上級曹長に昇進。二人は、アフガンのバグラム空軍基地に於いて
パースンが機長(及びパイロット)を務めるC-5ギャラクシーで再会した。

カブールで爆弾テロがあり、警察養成センターが爆破され、
ゴールドはそこで訓練プログラムに就いており、被害にあった自分の教え子を保護するため
(自身もいくらか負傷した)、傷病後送にあたっていたパースンの航空機で出会ったのだ。

ところが、離陸後、機は「高度を維持せよ」という命令を受領する。
どうやら複数の輸送機に爆弾が仕掛けられているという情報があり、
安全のため全機に対して同様の命令が発せられていた。
そして、クルーが機内を調査した結果、この機にも爆弾が仕掛けられていた・・・

爆弾は、種類が分からず、高度に反応するタイプなのか、
或いは他の要因で作動するタイプなのか分からない。

クルーは爆弾のほかにも落雷や暴風雨、火山の噴火、燃料の欠乏、
そしてストレスによる患者の暴走、と考え得るあらゆる航空トラブルに遭遇する。

爆弾というからには、爆弾を除去でもして、さてでは犯人である黒幕と戦うのか的な
ストーリーを予想しており、前作でもただの空軍の航空士だった主人公パースンが、
陸軍の特殊部隊員顔負けのアクションを演じてくれたので、
今回も同様の路線を想像していたのだが、そうはならず舞台は航空機内に終始した。


著者のトマス・W・ヤングはアメリカ空軍で輸送機の機関士を務めた人物。
飛行機でも戦闘機であれば、どちらかといえば情報も溢れており読み手も理解が容易だ。
しかし、輸送機となると、いまいち はて?という部分があるが、
著者は自身の経験を活かしてそんな疑問の答えを細かく解説してくれる。

蛇足だが、機関士と航空士は違う。機関士というのは、文字からなんとなく推進機関に
関連するものだということは分かるだろう。そう、動力関係を担当する職種だ。
「航空士」というのは、操縦、機関、あるいは兵器操作に関すること以外の
雑務一切に責任を持つ職務だ。
「雑務」と言っても、整備や積み荷に関することまで含まれるから、その業務は多忙である。


パースンとゴールドにいちゃいちゃしたところがないのも良い。
この手のエンターテインメントは小説でも映画でも男女が簡単に結ばれるが、私はそういう手合いが嫌いだ。
ともすれば物語の本質としての味が損なわれてしまうからだ。

本書は、いわゆるテロとか冒険といったアクションではない。
単なる航空機の事故関連の危機を描いたものだ。
しかしながら、素人は具体的に航空機に起きるトラブルをどう回避したら良いのか?
分からないので、つい読み進んでしまう。そういった効果もあって、
次から次にこれでもかと起きるピンチの連続にハラハラドキドキしながら、読む手が止まらなかった。
相当面白い一作と言える。

個人的には、”対テロ”という有り触れた主題がテーマの「脱出山脈」より本作の方が楽しめた。

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