■2015年10月13日:パルムの僧院
今回は正統派(何をもってそう呼ぶかは謎だが)の文学作品を紹介したい。
学校の教科書にも出てくるような書だ。
本作品は映像としては48年作の古い映画が有名だが、イタリアでは80年代にTVドラマ化され、
日本ではこれが92年か93年の夏か何かに、NHKの夜中の海外ドラマで3回ぐらいに分けて放映された。
歳がばれるが私も学生時代(夏休み中に見たのだと思う)にこれを見て、いたく感動したものである。
感動したのはクレリア(Clelia)・コンチの美しさ(@A)だ。
多感な青春時代の私の心に直截に訴えかけてきた。
ストーリーとしては、広く知られるところだが簡単におさらいしておく。
まず、舞台はパルマ公国(パルムはフランス語)。
これは、当時実際にイタリアにあった小国で、
この頃のイタリアというのはフランスのナポレオンに占領される直前で、
小国が群雄割拠していた時代であった。
話がそれるが公国というのは、王様ではなく公爵が統治する国のことである。
皇帝が配下の貴族に与えるものだったり、その土地の有力者が国を自称する場合もあるが、
さすがに自らを皇帝(皇帝は神聖ローマ帝国やロシア帝国にいるので)とは
名乗れないので公国としたり、といったいくつかのケースがある。
パルマ公国の場合は、スペインの従属国であったようである。
さて今書いたナポレオンの時代に、このパルマ公国にファブリスという青年がいた。
彼はそこそこの貴族の家(叔母がサンセヴェリナ公爵夫人)の出だが、
血気盛んでありナポレオンの軍隊に参加してみたり、
この時代の流行である”決闘”などに情熱を費やしていたのだが、
その決闘で政争に巻き込まれ、牢屋に入れられてしまう。
そして、その牢屋の窓から見えるところに、可憐なクレリア・コンチが住んでおり、
ファブリスはすぐに恋に落ちる。
サンセヴェリナ公爵夫人も甥に恋をしており、ファブリスの濡れ衣を晴らすために奔走するし、
また夫人には私が作品中で一番好きな人物である、モスカ伯爵を愛人としていたから、
空模様はちょっと怪しくなってくる。
ちっぽけなパルマ公国の宮廷を中心に、滑稽なほど他愛のない政争が展開する。
スタンダールは恋愛小説家として知られ、
本書はアパートの一室に籠って52日間で仕上げたらしい。
彼は自らの生国フランスは虚栄心に溢れた国だとして嫌い、
情熱の国イタリアが好きだとのことで、イタリアを舞台とした小説を書いたのだそうだ。
彼の小説は生前は売れなかった。芸術家の類にはそういうケースがあるらしい。
学生の時分にこんなものを読むのはどうかという向きがその頃からあったが、
歳を取れば、美しいものは儚い、という主題がテーマの作品を読むのもいいだろう。
私が見たという、問題の映像作品は多分これ(@ABCDE)だと思うのだが、
情報(@ABCDE)が少なく確証はない。