■2021年2月20日:狙撃手リーパー
スナイパー小説としては異色の作品。
主人公ヴィック・ハーウッドは黒人の米陸軍最強のスナイパーで、
武器はナイツ SR-25。
どこかの小説の殺し屋は、「経歴をたどられる」というわけで
武器は特定しない、というポリシーがあったが、
スナイパーという職種は、そこそこ仕事の精度が問われるため、
なかなかそういうわけにはいかない。
聞けば、米軍などは兵士が自分で武器を選べるらしい。
本書は全体を通して評価すると、前半は面白いので期待して読んでいくと、
中盤はけだるくなって、あまりにもつまらないので投げ出そうと思ったくらいだ。
まず、アラブのテロリストと結婚するフランス人女性などいない。
女性の射撃選手でオリンピック・メダリストが、
スポーツ・ドリンクの宣伝に起用されスーパーアイドルになる、
というのもまあアメリカではあるのかもしれないが、
日本ではなじみがない。
さらに、主人公が弱すぎる。あちこちでテロリストや敵対勢力に出し抜かれ、
何が面白いのかと読み進んでいくと、例のスポーツ・ドリンクに
薬物が入れられていたり、そもそも先の戦闘で脳を負傷したために
反応が鈍くなっている、だの思い当たるふしが出てくる。
それで、残り50ページで復活し”最強”の名に恥じない活躍を開始する。
最後に解説を読むと、著者のニコラス・アーヴィングは、
自身も陸軍の元狙撃手であった経歴を持ち、アフリカ系アメリカ人らしい。
なるほど、著者は主人公に自身の経歴を投影しているわけだ。
そして、裏表紙の折り込み部分の写真で見る限り、かなり(!)のハンサムである。
本国アメリカでは第二作、第三作も刊行されているそうだから、
女性ファンは目が離せないだろう。
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