■2023年3月21日:中島飛行機物語
原題:タイトルと同題 (1996年日本) | |
著者:前川正男/1915- 日本生 | |
文庫初版: 2000年6月14日 光人社NF文庫 | |
初版時価格: 552円 | |
巻数:単巻 | |
品番: N-273 | |
管理人読了日: 2000年6月21日 | |
映画化:未 | |
映画題名: | |
映画主演俳優・女優: |
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日本語DVD化:− |
三菱と並んで中島飛行機(現富士重)は、日本の航空業界の
2代巨頭だった。
特に零戦に関しては、機体設計は三菱だが、
搭載エンジン(発動機)は中島製の栄エンジンだった。
栄は、ハ(発動機のハ)25として、陸軍の隼などにも使用されていた。
同様に、同じく中島製で陸軍の四式戦闘機に積まれたハ45も、
海軍では「誉」と呼ばれ、紫電改に搭載されていた。
それぞれのエンジンは、最初は同じ仕様だったが、
生産が進むにつれ各軍の要求を容れていったために、
しまいには互換性がなくなってしまったという。
なぜそんな回りくどいことをしていたのかというと、
単に陸海軍の仲が悪かっただけだ。
よく言えば競争の精神なのだが、同じことは他にも事例があって、
例を挙げればきりがないが、私が知っているだけでも、
陸軍:照空灯 / 海軍:探照灯
陸軍:電探 / 海軍:逆探
陸軍:格闘戦 / 海軍:巴戦
陸軍:空中勤務者 / 海軍:戦闘機操縦者
これだけある。
また、これは渡辺洋二の何かに書いてあったことだが、
海軍ではそうではないのに、陸軍では上官に声をかける際、
相手の階級に「殿」をつけなければいけない、といった慣習もあったらしい。
陸軍の隼のパイロットが、成果を上げるために零戦をくれとせがむこともあった。
創業者、中島知久平は日米開戦の報を知るや否や、言ったそうである。
「これで、日本はもうダメだ・・・・・」
ミッドウェーの敗北など、山本長官の思いつきどころではない。
ある一局で戦闘に勝利したところで、戦争の勝敗は決まらない。
戦争で勝つためには、国力で勝利することが先決なのだ。
著者は荻窪の中島飛行機 補機機械工場長の職にあった人で、
補機というのはエンジンの気化器や油濾過機といったものだ。
文を読めば人柄がわかるというが、この人は物わかりのいい、
リーダーの資質があった人のようで、本書は中島飛行機創設の秘話や
後半の疎開状況の凄まじさなど、史実としても価値あるものだが、
それ以外にも読んで損はない一冊だ。
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