■2024年10月27日:弔いのダマスカス
原題:DAMASCUS STATION (2021年アメリカ) | |
著者:デイヴィッド・マクロスキー David McCloskey/ アメリカ生 |
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文庫初版:2023年3月20日 ハーパーBOOKS | |
第二刷時価格: 1,430円 | |
巻数:単巻 | |
品番:M・マ/5・1 | |
管理人読了日:2024年8月11日 | |
映画化:未 | |
映画題名:− | |
映画主演俳優・女優:− |
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日本語DVD化:− |
まず冒頭にダマスカスの市街図が載っていることに驚かされる。
こんなものは普通見られないだろう。
2010年代初頭、リビア、チュニジア、エジプト等、中東で当時の政権が倒され、
民主化に移行したがシリアだけは強権を発揮して現政権のまま、今も混沌状態にある。
近親者がスパイマスターだったり、軍司令官だったり、官邸職員だったりと、
限られた利権者間で権力の取り合いをしている。
まるで同族企業だ。
過去の王国の例などを見るまでもなく、この手の見苦しい権力争いは
不毛ゆえ、破滅をもたらすのが関の山だが、
当事者たちは存亡が掛かっているから、そんなことはおかまいなしだ。
迷惑をこうむるのはいつの世でも一般市民というわけだ。
そして、独裁国家は権力者が強権を敷くため、しばしば警察国家的な性向を持つ。
CIAのケースオフィサー、サムはこの国で同僚をスパイ容疑で亡くしたばかりだった。
CIAはサムを使ってシリアに新たなスパイを獲得しようとする。
ヒロインのマリアムはキリスト教徒のシリア人で、
イスラエルの武術クラヴマガを習得している、肝の据わった女性だ。
しかし、シリアも治世はできなくてもそういった面ではバカではないから、一筋縄ではいかない。
さらに予想外の勢力も加わり、混沌はますます収容がつかなくなる。
サムとその関係者たちはいかにして窮地を脱するのか。
先が気になってどんどん読んでしまう。
間違いなく面白い一作だ。
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