■2012年6月6日:サンタマリア特命隊
迫真のストーリー。そんな形容がまさにピッタリの作品。
ジャック・ヒギンズの初期の作品で、この頃のヒギンズは多くの名義を持っており、
本作の場合は「ジェームズ・グラハム」。
ヒギンズの小説は何故こうも面白いのだろうか?
短編であり文字通り小ネタなのだが、小ネタが小ネタに終わらず、ぎっしりと内容が詰まっている。
本書にしても別にこの作品を探していたわけではなく、
インターネットで古いタイトルを検索して見つけたのだ。古本屋で探すのは困難だろう。
一人称視点で語られる本書の舞台は、腐敗した軍と警察が支配する60年代のメキシコ。
元IRAのガンマンで祖国を逃れてきた主人公ケオーと、神父のなりをしたバン・ホーラン。
このバン・ホーランという人物、基本的には犯罪者で、銀行強盗などの常習犯。
神父の衣装は隠れ蓑というわけだ。それはともかく、根っからの悪人、というわけでもない。
ここが味噌で、後のリーアム・デヴリンを彷彿させるような人物像なのだ。
さて、二人はメキシコの町ボニトで出会い、どういうわけか目的地も一緒で、
二人はそこでふとした切っ掛けで酒場の娘を救い、堕落した警察官を数人始末する。
ところが躾を教えた相手は仮にも警察官であり、二人は逮捕されてしまうのだが、
そこで軍司令官より自由と引き換えに、謀反を起こした部下を見つけてお仕置きしてほしいと頼まれる。
それは当然簡単な依頼ではないのだが、彼らはともかく引き受ける。
そしてバン・ホーランは一命を捧げることになるのだが、ケオーの一人称視点で語られる
その男らしい生き様はヒギンズ小説の醍醐味だろう。生も死も自分で決める。
ヒギンズ作品のスパイス的な要素で、ヒロインかと思っていた女性が時々主人公を裏切ることがある。
ただこの作品に登場するインディオの娘はそんなことは無いのでご心配なく。
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