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■2012年9月20日:襲撃待機

クリックして拡大  原題:STAND BY, STAND BY (1996年イギリス)
 著者:クリス・ライアン
     Chris Ryan/1961- イギリス生
 文庫初版:2000年1月31日 ハヤカワ文庫
 第3刷時価格: 800円
 巻数:単巻
 品番:NVラ7-1
 管理人読了日:2002年1月5日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:−
 
 日本語DVD化:−

クリス・ライアンの処女作を紹介する。
彼の作品は以前にも紹介したように自身の軍歴に基づいた緻密な軍事スリラーだが、
ここで敢えて第一作を紹介したい。

というのは、最近の彼の作品は作品毎に異なる主人公を据えているが、
処女作である本作以降、最初の4作は主人公「ジョーディ・シャープ」シリーズと化しており
(4部作「襲撃待機」、「弾道衝撃」、「偽装殲滅」、「孤立突破」の4作)、
クリス・ライアンの作品群の中では最も読み応えがあるからだ。

その理由は、クリス・ライアン自身最初の作品に自分自身を投影しており、
完全に異なる主人公を配した場合と比べ、自らの経験を織り込み易かったためであろう、
主人公「ジョーディ」の心境や行動には真に迫るものがあり
(命を懸けているのだから真に迫って当然だが)、それ故に読み手も引き込まれる。

本書のストーリーは、SASの中堅軍曹「ジョーディ・シャープ」が、兵士につきものの
家庭でのすれ違いに悩み、克服したかに見えた矢先にIRAの爆弾テロによって妻を殺され、
あわやその復讐を果たそうかというところで事件に巻き込まれてしまう。
作品のタイムラインは北アイルランドから南米コロンビアへと移動する部隊を追うが、
南米での作戦を終え帰国すると、今度は恋人が誘拐されてしまう。
疲労したジョーディを畳み掛けるように襲う悲劇。
物語は思いっきり「次回に続く」の様相を呈して終わる。

先に述べたように本作は4部作なので、前述の4作はストーリーが繋がっている。
第2作の「弾道衝撃」で部隊はリビアに移動する。
しかしながら「襲撃待機(本書)」と「弾道衝撃」ではIRAのテロリストとの戦いを巡る物語であり、
誘拐された主人公の恋人の奪還とその結末を見ることで話としては完結する。
後続の2作ではSASの主人公やチーム・メンバーこそ続投こそすれ、
「偽装殲滅」はロシアのマフィア、「孤立突破」はアフリカの内戦が舞台であり、
話としては完全に「続編」だ。
この辺が著者もシリーズを4作で切り上げた理由だろう。
わざわざ同じ主人公で引っ張る必要が無い。

この4作はクリス・ライアンの軍人としての経験が生きており、リアリティ溢れる兵士の
心情の描写が巧みであることは後年の彼の作品を見ても良く分かる。
単純に軍事作戦の詳細を述べているだけのオタクな小説は山ほどあるが、
そういった駄作とは一線を画すクリス・ライアンの作品は、誰が読んでも面白いと言えるだろう。

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