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■2014年4月18日:海の都の物語

クリックして拡大  原題:タイトルと同題 (1981年日本)
 著者:塩野七生/1937- 日本生
 文庫初版:1989年8月10日 中公文庫
 初版時価格: 上680円/下760円
 巻数:上下巻
 品番:し4-4,5
 管理人読了日:1994年3月
 映画化:未
 映画題名:
 映画主演俳優・女優:
 
 日本語DVD化:−
 

塩野七生の本はコンスタンティノープルの陥落で知り、本書も興味があるならと
図書館で働いていた母が、ハードカバーを借りてきてくれたのを最初に読んだ。
そう、それも高校卒業後の行末を決められずプラカプラカしていたときに(笑

その後歴史が好きだった私は、こんな百科事典並の情報の宝庫である作品は、
ぜひ持っていたいと文庫版を買ってきてまた読んだのだ。
それが、同じ年、専門学校入学後の6月か7月のことだった。


ヴェネツィアは今でこそ美しいラグーナの景色で有名だが、
これは古代よりわざわざそのような目的で整備されたものではない。

本書は、フン族のアッティラから逃れてきた人々による(と言われている)建国から、
ナポレオン・ボナパルトに滅ぼされるまでの、約一千年間に及ぶ
ヴェネツィア共和国の歴史が綴られている。

私が言うことではないが、古代から中世のイタリアには、
アマルフィ・ピサ・ジェノヴァ・ヴェネツィアという4つの共和制都市国家を中心に、
小国が群雄割拠していた。
これは、ローマ帝国が東西に分裂した後、フランク王国や神聖ローマ帝国といった
大国が建国される中にあって、各国の利害とこれらの小国が存続を掛けて争った結果である。
ちなみに、ロードス島を本拠地とした聖ヨハネ騎士団は、アマルフィの商人たちが
聖地エルサレムの防衛のために創設したものだ。

これらの国は、小国の宿命で次第に今書いた順番に、より大きな勢力によって滅ぼされていくが、
ヴェネツィア共和国はその最後まで生き残る。
著者が言うように、ヴェネツィアは近年では稀に見る強力な共和国であるが、
なぜこんな小さな、その街のみが殆ど全国土であるかのような国が、18世紀の終わりまで存続し得たのか。
(ヴェネツィア共和国は直接にはナポレオンによって滅ぼされた)
その秘密が、この本には書いてある。色々挿絵も載っており楽しい。

この本を読めば、今、中国が領土拡大政策を企んでいることなど容易に想像がつく。


ヴェネツィア共和国が全面的に参加した第4回十字軍は、本来の目的から外れたと、
様々な歴史家から批判されている。私が高校で使った参考書にすら、そのように書かれていた。
しかしながら、私はこの件について著者と意見を同じくするものである。
契約に違反したのはフランスの気紛れな貴族達であって、
そのため自国の権益を優先したヴェネツィア共和国に非はないと考える。
ただ、それですらビザンチン帝国の依頼ではあったのだ。
聖地回復など専制君主の傲慢な悪行に相違なく、
キリスト教だろうと回教であろうと、信教の名のもとに殺戮を正当化する法はない。
まあ、まともな法など無い時代のことであったのだろうが。

ヴェネツィアの歴史は、1204年の第4回十字軍によるコンスタンティノープルの占領を境に、
その歴史の後半はオスマン・トルコ帝国との戦争に明け暮れる。
その戦闘で疲弊していったのだ。
よく言われるように、ヴェネツィア共和国の滅亡は宿敵トルコの存在は影響あるけれども、
大航海時代に勝ち残れなかったわけではない。
西欧諸国の植民地政策により、地中海の重要性が薄れてしまったためだ。


トルコと聞くと、私の目が光る。
学生時代の私は、そのオリエントな魅力にぞっこん惹かれていたのだ。

歴史の魅力は諸行無常の響きにある。
人間の一生と同じで、どんな国にも死というものが必ず訪れる。企業もそうだ。
物の哀れというやつで、その感覚は心の琴線に触れる甘美な感触がある。

塩野七生は、イタリアは元よりトルコ等中東世界に関して国内では第一人者だ。
その深遠な世界を、皆さんもご一読されてみてはいかがだろうか。

タイの政治家にも読ませたい作品だ。

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本書は史実に基づく物語である。今はインスタンブールと呼ばれるトルコ最大の都市は、その昔キリスト教徒の国の都市だった時代、コンスタンティノープルと呼ばれた。”プル”というのは、ギリシャ語で都市を表す”ポリス”という言葉の英語読みである。■2013年5月30日:コンスタンティノープルの陥落



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