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■2013年5月30日:コンスタンティノープルの陥落

クリックして拡大  原題:タイトルと同題 (1987年日本)
 著者:塩野七生/1937- 日本生
 文庫初版:1991年4月25日 新潮文庫
 第6刷時価格:1991年11月15日 360円
 巻数:単巻
 品番:し12-3
 管理人読了日:1991年12月
 映画化:未
 映画題名:
 映画主演俳優・女優:
 
 日本語DVD化:−
 

本書は史実に基づく物語である。

今はインスタンブールと呼ばれるトルコ最大の都市は、その昔キリスト教徒の国の都市だった時代、
コンスタンティノープルと呼ばれた。”プル”というのは、ギリシャ語で都市を表す”ポリス”
という言葉の英語読みである。

こんなところで私が歴史の講釈をしても仕方が無いのだが、それをしないと何の話か
分からないであろうから、簡単に必要な部分だけ述べる。

15世紀、イスタンブールはビザンチン(東ローマ)帝国の首都、コンスタンティノープルだった。
当時ビザンチン帝国の領土と言えば、バルカン半島側は殆ど首都コンスタンティノープルの周辺のみであり、
何度も外敵の攻撃を受けており、存続は風前の灯火となっていた。

本書は1453年のオスマン帝国のスルタン(皇帝)、マホメッド2世がコンスタンティノープルを攻略するまでと、
同市が陥落するまでの攻防を描いた傑作である。
事象の推移や登場人物は史実に基づきながら、その会話などにはフィクションを織り交ぜ、
読みやすい物語風に仕上がっている。


本書は私の母が当時世界史に熱中していた私に勧めてくれた。
(私の両親は父も母も大変な読書家である!)
ヴェネツィア在住の著者の作品では、「海の都の物語」も読んだし、
もちろん後述する「戦記物三部作」も全て読んだ。
高校生だった私は塩野七海以外にも歴史小説の類をむさぼり読んだ。
但し、三国志とかその手のものには手を出さなかった。
その頃から漢字は苦手だったのだ。

今や「ローマ人の物語」で日本の国民的作家と言って差支えない存在である著者は、
本書に続いて「ロードス島攻防記」、「レパントの海戦」と新潮社から戦記物三部作を
ものしており、後編の2作は登場人物等、より物語調の色彩が濃くなっている。
それでも、”出演”させた騎士達のその後をエピローグで詳細に記述するなど、
徹底した取材を行ったことがうかがえる。


ロードス島といえば世界の七不思議のひとつ「消えたコロッサス」や、
映画「ナヴァロンの要塞」のロケ地にもなるなど話題に事欠かない島だし、
「レパントの海戦」はあまりにも有名だ。
塩野七海は「緋色のヴェネツィア 聖マルコ殺人事件」など、”軽い”小説も著している。
私はさすがに「ローマ人の物語」までは読んでいないが、
「ロードス島攻防記」の解説にもあるように、”今日の日本が所有する最も卓越した物語作家”の
称号を冠して全く差支えないだろう。

そんなこんなで地中海世界に憧れた私は、ついにイスタンブール旅行を実現する。
大人になった充実感を実感した旅だった。
私はそこまで行かなかったのだが、現代では街が広がり当時オスマントルコ側が布陣した地域は、
”アジア側”として”西側”に負けず栄えているという。

なおコンスタンティノープルがイスタンブールと改称されたのは、20世紀になってからのことらしい。

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