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■2015年7月21日:レッドセル

クリックして拡大  原題:RED CELL (2012年アメリカ)
 著者:マーク・ヘンショウ
     Mark Henshaw/ アメリカ生
 文庫初版:2014年2月25日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 1000円
 巻数:単巻
 品番:ヘ17-1
 管理人読了日:2015年4月21日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:− 
 日本語DVD化:−

どこかの国(大抵は中国かロシアだ)とどこかの国(これもまた大抵はアメリカや日本だ)が
戦火を交える、という小説は良くある。

私は本来この手の小説は嫌いだ。
想像の話をしても仕方がないし、それがこと戦争となると、荒唐無稽なものに見えるからだ。

最初、この本は諜報小説だと判断して購入した。
前半は退屈だ。ひたすら大使館がどうの弁護士みたいな奴がどうの、という話に終始する。
が、これは諜報小説の常道であり、我慢して読んでいくと、1/3あたりまで進んだところから
中国が台湾領への進攻を開始し、俄然面白くなってくる。


著者は軍事面でも、IT関係の面でも、相当調査の下積みをしていることが伺える。
コンピューターのリバースエンジニアリングについては
「古代エジプトの民衆文字をロゼッタストーンを使わずに翻訳しようとするようなもの」と例えている。

またキッド級駆逐艦がイランに売却される予定だったものが、台湾に売却されたのは事実だし、
同級がRIM-66 スタンダード艦対空ミサイルを搭載しているのも事実だ。

ただ、訳者はこうしたリアリティにあまり興味はなかったらしい。
キロ級潜水艦とキッド級駆逐艦が出てくるところで、2回ほどキロ級駆逐艦、と書き間違えている。
小説の本筋にこんな細かいことは関係ない、とする単純なプロ意識の欠如があったとしたら、
情けない限りだ。

それはさておき、本書ではCIAの情報部員、キーラ・ストライカーと上司である分析官の
ジョナサン・バークが、中国がステルス戦闘機を開発していることを暴き、
米海軍空母打撃群(Carrier Strike Group)が中国の台湾侵攻の野望を打ち砕く、
中国嫌いには爽快なストーリーだ。
描かれている中国の国家主席は、まさに中国人の典型。
質問を質問で返し、答えになっていない返答をして回答したと豪語する能無しで、
まるで清高のような人物だ。
そもそも実戦経験のない中国がどうやったらアメリカに勝てるのか謎だが、
最後には上述のようにこっぴどく叩きのめされ、それでも負け犬の遠吠えを繰り返す。


確かに、主人公のキーラという女性は、生意気というか世間知らずで、
男だろうと女だろうと、新入りの分際でこんな振る舞いが許されるはずはない。
この人物を主役とする続編などあまり興味をそそられないが、
軍事リアリティ有り、中国の庶民生活が垣間見える一面や、
迫真のスパイ活動の裏事情など、それを覆すに足る会心の著者デビュー作だ。

読んでみて損はしない一作なので、ちょっと高いが千円札一枚と引き換えに、
充実した読書休みを送られてはいかがだろうか。

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