■2018年2月25日:蘇ったスパイ
原題: A FOREIGN COUNTRY (2012年イギリス) | |
著者:チャールズ・カミング Charles Cumming/1971- イギリス生 |
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文庫初版:2013年8月25日 ハヤカワ文庫 | |
初版時価格: 1,000円 | |
巻数:単巻 | |
品番:NVカ16-2 | |
管理人読了日:2017年5月25日 | |
映画化:未 | |
映画題名:− | |
映画主演俳優・女優:− |
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日本語DVD化:− |
カルタゴなど地中海の諸都市を旅してまわる情景がリアルだ。
ただ、国民の血税で食っている秘密諜報員が、
高価なホテルに泊まったりなどできないはずなのだが、
そこは小説であって、その方が面白いのだからそうしたまでだ。
諜報小説の常で出だしは退屈なのだが、
ページを経るにしたがって、いつの間にか止まらなくなっていることに気付く。
本作の主人公、ケルは元SIS(英秘密情報部)部員で、
本人曰く彼に落ち度はないそうだが、クビになった経歴を持つ。
ところが、あるSISの上級女性部員が行方不明になったため、
飲んだくれて二日酔いのところを元同僚に呼び出され、
北アフリカに経つことになる。
読み進むにつれ、意外な事実が多々発覚し、
驚きとともに、こんなからめ手を思いつく物語のたくみさに舌を巻く。
この主人公、と相手の上級女性部員、お互いに既婚でありながら
妻あるいは亭主と上手くいっていないというから、
フォーサイスあたりの小説に登場する諜報員もそうだが、
この世界に生きる人間はさもありなん、という感じである。
気の毒な限りだ。
本作は著者の2作目にあたるらしい。
機会があれば1作目も読んでみたいところだが、
早川書房の小説は、最初そうでもないな、と思いつつ
最後まで読んでみると傑作ばかりで、同社の本の選び方には
(だから途中で途切れてしまう作家の作品もあるが)脱帽せざるを得ない。