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■2012年3月12日:解放の日

クリックして拡大  原題:LIBERATION DAY (2002年イギリス)
 著者:アンディ・マクナブ
     Andy McNab/1959- イギリス生
 文庫初版:2007年5月25日 角川文庫
 初版時価格: 895円
 巻数:単巻
 品番:マ10-5
 管理人読了日:2008年3月19日
 映画化:未
 映画題名:
 映画主演俳優・女優:
 
 日本語DVD化:

アンディ・マクナブは元英陸軍特殊部隊SAS (Special Air Service)所属の兵士であり、
退役後に戦闘記録である「ブラヴォー・ツー・ゼロ」、「SAS戦闘員」等を執筆後、
著した小説の日本語訳されたものの内、最新刊に当たるのが本書だ。

アンディ・マクナブは前述の戦闘記録類の出版により公の名誉を得ており、
現在では軍事コンサルタント的な活動をしているようで、その方面での名声も高い。
ところで彼は捨て子だったというから驚きだ。

前述の2作品も”戦闘記録”とはいえ小説チックに書かれており、兵士たちのスラング有りで
微笑交じりで読める作品になっている。

初期の作品「リモート・コントロール」、「クライシス・フォア」等ははっきり言って良く分からなかったのだが、
共通の主人公を据えた作品が今までに5作日本語に翻訳されており、第3作目当たりから
徐々にストーリーも分かりやすくなってき、5作目にあたる本作では、
いよいよ謀略溢れる読み応えのある作品に仕上がっている。
個人的には5作中1番面白かった。


本作の主人公ニック・ストーン(ニック・ストーン・シリーズとも言われる)は、著者と同じようにSASを退役後、
英秘密情報部SIS (Secret Intelligence Service、冷戦時代はMI6と考えられていた機関)等から仕事を貰って
隠密作戦を遂行し、食い繋いでいる身分だ。自らが後見人であるシリーズ1作目で殺された元同僚の
(父の死の影響で)心に病を受けた幼い娘の療養費が必要であり、
また元兵士であるから他の仕事の口を見つけられない、といった都合上、
嫌でも現在の仕事を辞められない身分だ。

そんな何処か我々と同じでうだつの上がらないところのある、好感の持てる主人公が、
様々な依頼を受け、様々な危機や困難を潜り抜ける。ニックはボブ・リー・スワガージェインソン・ボーンと違って、
超人的なところは何もない。我々と同じ生身の人間であり、我々と同じ過ちを犯しやすい一人の人間である。
そんな等身大の人間像のニックは鍛えられているとはいえ、持てる武器は根性や忍耐など、我々とそう大して変わらない。
時には銃で、時には泥臭い殴り合いで修羅場を克服する。
そういったところが、真に戦闘の現場を知る元兵士ならではの小説だ。

今回ニックは前作(ラスト・ライト)で知り合った女性の父であるアメリカ政府の幹部職員から、
半ば無理矢理依頼され(断れる状況ではなかった。)、
アルカイダの資金源となっている人物を見つけ出し抹殺するため、フランスだかモナコだかに潜入し、
エジプト人のチームメイトと共に標的を見つけ出すため奮闘する。
この”スパイごっこ”が顔の見えない相手との”ポスト”を使ったやり取りだったりするなど、現実味たっぷりだ。
ニックが依頼を受ける段といい、特殊作戦の裏方が良く分かった。一見特殊作戦とは正義の行いに聞こえるが、
そのプロセスは必ずしもそうではなく、一般市民や当事者達には何ら関係のない政治的な陰謀がうごめいているのだ。

そしてその結末は、結構複雑なエンディングだが、感動すること間違いなしだ。


マクナブのような作家の書く作品は、ハッピー・エンドだったり、劇的な終わり方だったり、大どんでん返しだったりはしない。
あくまで現実に基づいた、有り得そうなシナリオなのだ。それだけに、読了後は感慨も一塩である。
我々の知らない裏方で世界のために戦う、影の戦士の物語。
リアリティ溢れる迫真の一作であることは間違いない。

なおマクナブの作品は本家アメリカでは続々と刊行されているが、
日本では続巻は未だ翻訳されていない。早急な刊行を望む。

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