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■2012年10月5日:サンダーポイントの雷鳴

クリックして拡大  原題:THUNDER POINT (1993年イギリス)
 著者:ジャック・ヒギンズ
     Jack Higgins/1929- イギリス生
 文庫初版:1998年4月15日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 800円
 巻数:単巻
 品番:NVヒ1-22
 管理人読了日:1998年9月15日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

ヒギンズの小説は私の蔵書(というほどのものではないが)の中で一番数が多いと思うのだが、
その割にはあまり紹介していない。まあ勿体ぶっている部分もある反面、
UPしている量ものらくらしているので、こんなペースなのだろう。

そのヒギンズの作品紹介も、3回目の今作でいよいよ現行(最新刊は日本では刊行されていないが)の
ショーン・ディロン・シリーズに突入である。
といっても、第一作目の「嵐の目」ではなく、ディロンの永遠のパートナーである
ハンナ・バーンスタイン警部が登場する第三作目の「密約の地」でもない。
本作は最初悪役として登場したディロンがこういう活劇としては珍しく
”善玉”に寝返って最初の舞台、どうやらこの主人公を据えた小説がシリーズとして継続するな、
と匂わせる最初の作品なのである。
そういった面で本書にはわくわくさせられた。


ストーリーはもう随分前に読んだので(私も年を食ったものだ)既に忘れてしまったが、
作品の裏表紙とあとがきの内容を盗み見すると、第2次大戦のドイツ軍の秘密文書が
カリブ海で沈潜(Uボート)と一緒に沈没していて、それを奪取することが英国政府として必須である、
というもの。しかし危険が予想されるのでそれには優秀なガンマンがいる。

そんなとき、英国諜報機関の長、ファーガスンが諜報機関の長らしく張っておいたありとあらゆる網の中から、
元IRAのガンマン、それも相当のはみ出し者とのお墨付きの男を捕えたという報告が入る。
こうして、セルビアで捕まったショーン・ディロンに出番が回ってくる。

このショーン・ディロンという男、ヒギンズが描くヒーロー像の集大成と言っても良いだろう。
作中で「同業者で肩を並べうるのはカルロスだけ」と表現されるほどのコマッタちゃんで、
リーアム・デヴリンのニヒリズムをさらに進化させたワルさ加減と、
その割に毎回結構ピンチに陥る人間的な甘さを兼ね備えた、
まさに不景気で物騒な現代のヒーローとして相応しい、人間臭い人物。

舞台となるカリブ海の美しい海の描写、
絶世の美女と名前からして”いかにも”な悪役、マックス・サンチャゴ。
そして世界一美味なコーヒー、イエメン・モカというセレブぶり。
<2013.08.17訂正:イエメン・モカの登場は「密約の地」でした。申し訳ありません。>
気を抜く暇も無いストーリーとは対照的に、舞台背景は夢のような設定で、
本書は休日を楽しむにはうってつけの一作だ。この辺がヒギンズが巨匠たる所以だろう。
あとがきにもあるが小説というものは、もちろん心に残ったり印象深かったりためになったりしなければならない。
しかし、そういった役割は実用書に任せるべきだ。真の小説は、映画と同じで楽しめなければならないのだ。

私も本書を読んだ頃は就職したての青年で、工場勤務だったから(今もそうだが)
少ない休日を小説と共に過ごすなんて贅沢な時間だな〜、
と感慨深く本書と時を過ごしたのを今でも良く覚えている。
丁度今ぐらいの季節で、日本は初秋、心地良い気候だった。


ところで本作品のキー・アイテムである秘密文書だが、実は大した中身のものではなく、
暗号装置だとか核兵器だとか、そういった大それたものではない。
かと言って史実に対して嘘になるような、歴史を歪めるほどのものでもない、
こういう小説のネタになるような、ちょっとしたどうでも良い小道具を編み出す技に長けているのも、
ヒギンズならではの巧みさだろう。

最近の三流小説に見られるようなアフガンのテロリストが細菌兵器を持ち出した、
みたいなバカげた設定の小説など読む気がしない。
”書類”の方が男のロマンをそそるではないか。

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迫真のストーリー。そんな形容がまさにピッタリの作品。ジャック・ヒギンズの初期の作品で、この頃のヒギンズは多くの名義を持っており、本作の場合は「ジェームズ・グラハム」。■2012年6月6日:サンタマリア特命隊
ジャック・ヒギンズは私の大好きな作家である。最初は友人に映画を「あれ面白いよ」と薦められて映画とともに原作も読んだような覚えがある。というかナヴァロンの要塞もそのパターンだったのだが、今頃彼は元気だろうか(オイオイ、ごめんねK君)。ところで本書には「完全版」もあるが後付けであり、何が違うのか今となっては私も覚えていない。■2012年1月18日:鷲は舞い降りた



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