■2012年12月7日:アフガンの男
原題:THE AFGHAN (2006年イギリス) | |
著者:フレデリック・フォーサイス Frederick Forsyth/1938- イギリス生 |
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文庫初版:2010年7月25日 角川文庫 | |
初版時価格: 上/下とも:552円 | |
巻数:上下巻 | |
品番:フ6-26,27 | |
管理人読了日:2011年10月31日 | |
映画化:未 | |
映画題名:未 | |
映画主演俳優・女優:ー | |
日本語DVD化:ー |
フレデリック・フォーサイス、の最新作ではないが準最新作がコレ。
「神の拳」のマイク・マーチン少佐(本作では大佐)が主人公で、
またぞろ大活躍してくれるので期待して読んでいくと、最後は残念な結果に・・・
元SAS出身のマイク・マーチン大佐は、本書の時点では既に退役して
イギリスの田舎で家を建てるという、壮大な計画を実行中だったのだが、
ある日諜報機関の人間が訪ねて来、また手伝ってほしいという。
今度は、アルカイダが企てる陰謀の阻止である。
但し、手段や方法は不明であり、その内容を知るにはマーチン大佐にアフガン人に
なりすまし、アフガンに潜入してもらわねばならない。
幾度となく戦場に身を置き、祖国の為、世界の為に命を懸けるという任務を黙々とこなしてきたマーチン大佐は、
今度もまた引退していたとはいえ、愚痴ひとつこぼさず依頼を引き受けるのだった。
マイク・マーチンは44歳。少年時代をイラクで過ごし、若い頃アフガンで任務に付いていたことがあるので
パシュトー語もマスターしている、というのは今回追加された新たな設定だろう。
年齢については仮に本書が刊行された2006年が舞台だったとして、湾岸戦争は90年だから、
44から16を引くと28で、少佐にしちゃ若すぎねえか、という気もするがそれは言いっこなしだ。
首尾よくアフガンに潜入し、当初は無人機にて追跡・生存が確認されていたマーチン大佐だったが、
途中、大佐が東南アジアでごちゃごちゃやっている間に
(彼の方はテロリストにくっついて行っているのみであり、彼の希望でどうにかなることではなかった)、
アメリカ側は彼を見失ってしまう。
しかしながら、テロ計画というのは結局のところ舟爆弾であり、
マーチン大佐は最終的に大西洋の船上で行われた、G8会議の各国首脳を救ったのだった。
この舟爆弾というのが、ダミーがあったり、マレーシアのタックス・ヘイブン島として有名な
ラブアン島が実は海賊の基地になっているなど、そういった設定はさすが。
ラブアン島やらボルネオ島には常々行ってみたいと思っていたが、本書を読んで
太平洋の楽園で、常夏の微風と世のはかなさを感じるマーチン大佐に思いを寄せたり。
アフガンのテロリストの生い立ちや経歴がしっかり書き込まれている点もうならせる。
巻末の解説にもあるように、「小説の命はストーリーの面白さ」と言うフォーサイスにしては、
本書はいつになく心に沁みる一冊だった。
今までのフォーサイス作品とは趣を異にする作品だ。
本書によれば、タリバンというのは、パシュトー語で”タリブ”(弟子(学生))という言葉の複数形のことで、
その指導者ムハンマド・オマルの元に馳せ参じた兵士たちが自称したそうである。
私は本書でちょっと齧っただけの門外漢ゆえ、詳細は避けるが、
アフガニスタンはソ連との戦争の後、内戦状態に陥り、タリバンというのは元々は義勇軍のようなもので、
それが堕落して現在のようなテロ支援組織に至っているというのが実情だ。
あらすじを殆ど書いてしまったが、だいたいこんなところである。
これだけ読んで本書を読んでみたい、と感じられた方がいるかどうかは不明だが、
肝心の物語の骨子は書かなかったつもりである。(笑
マーチン大佐は私にとってはお気に入りのキャラクターであり、
また登場してくれてわくわくしながら読んでいたのに、結末がちょっといただけなかったが、
壮大なストーリーのためだろう。
この本を読んで、一般人にはとても無理な話だが、マーチン大佐のように価値ある生き方とは
どのように心がければ良いのか、最初から諦めていては何も達成できないので、
とても考えさせられる一作だった。
今も本書をおさらいで読み返しているうちに、気が付くと数ページ読んでいる。
フォーサイスの最新刊の文庫化が楽しみである。
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