■2013年6月14日:抹殺部隊インクレメント
原題:THE INCREMENT (2004年イギリス) | |
著者:クリス・ライアン Chris Ryan/1961- イギリス生 |
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文庫初版:2006年7月31日 ハヤカワ文庫 | |
初版時価格: 900円 | |
巻数:単巻 | |
品番:NVラ7-9 | |
管理人読了日:2006年8月5日 | |
映画化:未 | |
映画題名:− | |
映画主演俳優・女優:− |
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日本語DVD化:− |
クリス・ライアンの作品は処女作「襲撃待機」から始まる4作の「ジョーディ・シャープ」シリーズの他に、
本作とその直前の作品「テロ資金根絶作戦」以外にシリーズものを持たない。
著者は単発の作品の創作を得意とする。
世間の並み居る大物作家ですら、ある作品で名を挙げた登場人物を中心に据えた
”シリーズ物”を連作するこの業界に於いて、真に実力のある作家ならではだろう。
本作「抹殺部隊インクレメント」で登場する元SAS隊員マット・ブラウニングは、
上述の前作「テロ資金根絶作戦」にて軍を退役後、いくつかの警備業をこなしながら
「株」に手を出してしこたま金をすり、文無しどころか借金地獄に陥っているところに
英情報部MI5の人間が現われ、アルカイダの金塊を奪う仕事を請け負う。
罠をかいくぐりながらなんとか生還し、大金を手にして恋人とともに安逸な生活を送るマットだったが、
そこに今作では別の英情報部SISの人間が現われ、マットは口座を凍結されベラルーシで
イギリスの薬を違法に生産しているグループを壊滅させろ、という指令を受ける。
訝しむマットの前に今回はSIS長官が自らマットの説得にあたる。
再び陰謀の匂いを嗅ぎ付け苦悩するマット。
恋人も殺された。この女は嫌な女だったので個人的にはざまあみろだったが、
小説の登場人物にとってはそれどころではない。
医薬品と石油はイギリスの二大輸出品目だと本書の中でも解説されているが、
題材として適切だろう。
クリス・ライアンの小説も比較的女性が主人公を裏切ることが多く、
前作もそうだったので警戒して読んでいたが、今回のヒロイン、オーリーナはそうではないらしい。
それどころかかなり逞しい女性である。
冒険小説に陰謀があるのは当然で、今作のそれは主人公の過去の禍根に根差したものだったが、
際どいところで悪の陰謀を叩きのめしたマット。
オーリーナとの関係といい、エンディングの迎え方からして続編ありきと思いきや、
未だそういう情報は流れて来ない。
さんざん国のために働いた兵士だ。
著者もしばし休息を与えることにしたのかもしれない。
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