■2014年6月7日:テロリストの回廊
原題:AGAINST ALL ENEMIES (2011年アメリカ) | |
著者:トム・クランシー Tom Clancy/1947-2013 アメリカ生 |
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文庫初版:2013年11月1日 新潮文庫 | |
初版時価格:上巻:790円 下巻:840円 |
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巻数:上下巻 | |
品番:ク28-51,52 | |
管理人読了日:2014年4月32日 | |
映画化:未 |
昨年亡くなったトム・クランシーの最後の作品。
久しぶりの新シリーズと思いきや、残念極まりない限りである。
主人公マクスウェル・ムーアは、元SEAL隊員で現在は主にパキスタンで活躍するCIA工作員。
相次ぐタリバンの暗躍で作戦を失敗させられたり、CIA側の資産を暗殺されたりして悩む中、
本国アメリカより召集が掛かる。
それは、失敗の引責では無く、タリバンとメキシコの麻薬カルテルの繋がりを発見したので、
その両者の関係を撲滅し、ひいては米国の不利益となる悪の根を絶やすのが目的であった。
だが実は、タリバンは麻薬カルテルと共謀した中身の他にも、恐ろしい悪だくみを持っていた・・・
阻止する側の組織は統合タスクフォース(JTF)として米国の各種捜査機関が協力し、
困難な捜査に当たる中、タリバンのコマッタちゃんが独自のテロ計画を目論む。
ここで言うテロ計画とは、ミサイルによる旅客機の撃墜である。
世界の旅客機は、イスラエルを除いてコストの観点から対ミサイル妨害・対抗手段を搭載していない。
クランシーの小説の良いところは、主人公の味方が適宜死ぬことである。
彼らは、苦労してテロリズムを阻止するべく戦い、時には命を落とす仲間もいる。
クランシーの主人公達は等身大のヒーローなのだ。
そこに、読者は共感して涙を共にするのである。
マクリーンやラドラムの諜報ものだと、あまりに懲りすぎて
ともすれば中盤、だらけがちになるものだが、その辺はエンターテイナーたるクランシー、
最後まで爽快なアクション調の語り口で読者を引っ張ってくれる。
相変わらず銃器の名称のみで詳細な解説のない軍事マニアックぶりは健在ながら、
中身はまあまあ楽しめる小説である。
訳者あとがきに次回作(本書の続編)はアメリカ本国で刊行中止となっているが、
訳者としては今後のムーアの活躍を待ち望んでいるとのこと。
しかしながら末筆で著者の訃報を伝えており、出版直前に慌てて書き足したものに相違ない。
本書は日本では文字通りトム・クランシーの遺作となった。
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