■2018年12月16日:内乱記
読み終えて、何はさておきカエサルというのは、
どれほど天才的な人物だったのだろうかと、唸ってしまった。
何が天才なのか、と聞かれれば、
ガリア戦記もそうだが、カエサルは、内乱記でも、
初めから勝つつもりで、いや勝利を確信していたのである。
カエサルは、いわば「勝てぬ戦には臨まない」人物だった。
もちろん、戦役後に書いたのだが、
全編に渡って自己の優越性に絶対の自信を持って書いている。
本書は、「ガリア戦記」のあと、元老院から元老院最終勧告の発布を受け、
ルビコン川を越えてから、宿敵ポンペイウスの死までの戦記が
活き活きと書かれている。
訳注にも書かれているが、本書では「アレクサンドリアでポンペイウスの死を知った」と
ポンペイウスの死について述べられており、
その後のことも少しだけ、後日譚のように書かれているが、
事実上このポンペイウスの死までで本書は終わっている。
はっきり言って、この一言にカエサルの心情が集約されていると思う。
このあとのエジプト王朝の後処理など、カエサルにとってはどうでもいいことだったのだ。
つまり、「内乱記」はポンペイウスとの戦いについて綴られたもので、
カエサルから以前は盟友だった男、ポンペイウスに対して捧げられたオマージュなのだ。
そう考えると、納得がいく。
本書もガリア戦役と同じように、
なぜか直訳のような感じで書かれており、若干読みにくいのだが、
訳者の違いかガリア戦役とは違って、
物臭野郎とか、時間割とか、尻をたたかれてとか、
おくゆかしい表現が目立つ。
微笑しながら楽しんで読めるようになっている。
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