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■2020年8月18日:ともしびをかかげて

クリックして拡大  原題:The Lantern Bearers (1959年イギリス)
 著者:ローズマリー・サトクリフ
     Rosemary Sutcliff/1920-1992 イギリス生
 文庫初版:1969年11月27日 岩波書店
 第11刷時価格: 1988年4月20日 1900円
 巻数:単巻
 品番: -
 管理人読了日:2020年1月30日
 映画化: -
 映画題名: -
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

2冊目に手にしたサトクリフの作品は、母にもらったものだ。

本書の主人公、アクィラは「第9軍団のワシ
にも登場する、マーカス・フラヴィウス・アクィラの子孫にあたるらしい。

時代背景は前回も最後に触れた、ローマ軍撤退後のブリタニア。
アエティウスが話に出てくるところからして、
西ローマ帝国も末期の頃と思われる。

アクィラは例によってローマ軍の補助部隊
(ローマの属州出身者達の隊で、正規軍団を支援した)
の騎兵部隊の十人隊長。
いわゆるローマ化したブリトン人だが、
ここでいうローマ化とは、要するに駐留したローマ軍の兵士が
退役後もその地に住み着き、土着民の女との関係を築いた結果、
混血の子孫というわけだ。

物語序盤で、ローマはもうブリタニアから手を引いたので、
補助部隊にもブリタニアからの撤退命令が出される。
アクィラは命に背き父と妹のもとに残るのだが、そんな彼を悲劇が襲う。


ブリタニア以外にも各地に侵攻したローマ軍は、土着民から見れば侵略者なのだが、
この時代はいわゆるゲルマン民族の大移動で、各種のゲルマン民族がローマ領に侵入していた。
それで、アクィラ一家を襲った悲劇もそんな一幕なのだが、
彼らを襲ったのはジュート人(いわゆるヴァイキングの一派)で、
サクソン人とともにユトレヒト半島から海を渡ってブリタニアの地に移住する。

この辺はまさしくTotal War Attilaの世界で、かのゲームでも
サクソン人とジュート人は友好的に描かれている。
本作はフン族にも触れているが、フン族の歌、という表現がされていることから、
アッティラの死後ではあるらしい。


本書に登場する主人公以外の主な登場人物
サトクリフは、ブリテンとブリトンという呼び名を、
前者を地名、後者を民族として使い分けているようだ。
ブリトン人 アンブロシウス ブリトン人の諸侯。
ローマ化したブリトン人で、伝説的指導者
ボーティガン 同じくブリトン人の諸侯で、
ヘンゲスト始めサクソン人をブリテン島に呼び込み、
ヘンゲストからロウィナを妻に娶る。
後に一派全体をヘンゲストの奸計にハメられ、本人は殺されなかったが、
最終的に人間のクズにふさわしく死んでいく。
ボーティマー ボーティガンの息子。
父ボーティガンが元の妻を離婚しロウィナと結婚したことに腹を立て、
弟たち・配下の者たちを連れてアンブロシウスに仕官する。
後にヘンゲストの一派に暗殺される
カティガン ボーティマーの弟。
ドロブリブエの町の戦いで戦死
パセント ボーティガンの末の息子。
兄ボーティマーが暗殺された後も、アンブロシウスに忠誠を誓い続ける。
サクソン人 ヘンゲスト サクソン人指導者。
ボーティガンと当初同盟を結び、アンブロシウスと争う。
ホーサ ヘンゲストの弟。
ドロブリブエの町の戦いで戦死
ロウィナ ヘンゲストの娘。
ボーティガンと結婚する

上記は、史実にも登場する人々だが、いかんせん古き時代のことゆえ、伝説の域を出ない。


今回はろくすっぽあらすじに触れなかったが、
本書は歴史巨編の傑作である。

ブリタニアの地を巡って各種の種族が総当たりする戦は、要するに内戦である。
何をブリタニアという、小さな島を巡って争っているのかと思う。
ただ、現代でも例えば越してきた隣人といざこざが起こることはある。
人間とは、そういうものなのだ。

昨今はかの地でもスコットランドの独立やら、イギリス自体のEUからの離脱やら
騒がれているが、歴史は繰り返すとはこのことである。
スコットランドとは、古代ではカレドニアと呼ばれ、ピクト人が住まっており、
ブリテン中・南部がローマの属州後も、ローマ化されなかった土地だった。

ローマでも血を分けた肉親同士が戦う内戦は、共和政時代から繰り返されてきた。
内戦とは、当事者たちの怨念を晴らすことの他に、
思想や理念、政体の統一といった変化があるが、
大変な国力の疲弊が伴うものなのである。


近頃は、ろくに知りもしないで知ったようなことを言う輩がいる
コンピューターや携帯電話などのおもちゃが普及した弊害だが、
そうならないために、書物から学びたいものである。


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