■2013年3月21日:ブラック・ホーン
原題:BLACK HORN (1994年イギリス) | |
著者:A.J. クィネル A.J. Quinnell/1940-2005 イギリス生 |
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文庫初版:2001年4月25日 集英社文庫 | |
初版時価格: 657円 | |
巻数:単巻 | |
品番:ク4-8 | |
管理人読了日:2001年8月27日 | |
映画化:未 | |
映画題名:− | |
映画主演俳優・女優:− | |
日本語DVD化:− |
「燃える男」の続編で、クリーシィ・シリーズ第4作目となる本作。
第5作目となる「地獄からのメッセージ(新潮文庫)」もあるが、
著者が逝去されてしまったため、最終作となってしまった。
個人的には本書かひとつ前の「ブルー・リング」がクリーシィ・シリーズ中の傑作と考える。
今回本稿を書くために再度読み直したのだが、つい面白くてどんどん読んでしまった。
のっけから分裂気味の神父が登場するぶっ飛びよう、
マイル=ハイ・クラブの話題が登場するなど世界中を旅したクィネルならではの味付けが、
卓越したストーリー・テリングと相まって、ぐいぐい読ませる。
読み終えた感想は、心底面白かったなあ、と思うのである。
やはりクィネルの力量は並み居る作家とは違う。
内容の方はというと、主なキー・アイテムは「犀角」である。
この犀角を巡って、今回クリーシィ一行はアフリカはジンバブエの奥地を探検する。
ジンバブエといえばその昔はイギリスの植民地(国名はローデシア)であり、
独立戦争を戦って現在の悪名高いロバート・ムガベが初代首相から現在の大統領と
トップの座を最初から牛耳っている。
ともあれクィネルはローデシアで生まれタンザニアで育った経歴から、
アフリカを熟知しており、ジンバブエの奥地の描写はリアルこの上なく、
読み手はまるで自身がアフリカの大自然の楽園にいるかのような錯覚を覚える。
アフリカでの作戦が作品の大部分を占める本作だが、実際クライマックスは香港で迎える。
この地の犯罪組織「14K」が絡んでいたためだ。
14Kというのは実在の組織で、中国の「三合会」という犯罪組織の一分派だ。
現代のアルカイダに色々グループがあるのと同じだと言えばわかりやすいだろう。
この辺の設定も世界情勢に通じたクィネルならではの選択だ。
クリーシィは例によって悲劇のヒーローとしての宿命を背負いつつ、
仲間達とともに「組織のアジト襲撃」を敢行する。
本書は、現代社会では失われてしまったヒロイズムを体現する男、
クリーシィの胸のすくアクションを前面に、
国際情勢も読める(今となっては少々古い世代だが)一大エンターテインメントである。
もし本書を手にする機会があったら、絶対に面白いので読んでみてほしい。
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