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■2014年10月23日:脱出連峰

クリックして拡大  原題:THE RENEGADES (2012年アメリカ)
 著者:トマス・W・ヤング
     Thomas W. Young/ アメリカ生
 文庫初版:2013年7月15日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 1,100円
 巻数:単刊
 品番:NVヤ-3-3
 管理人読了日:2014年6月18日
 映画化:未
 映画題名:未
 映画主演俳優・女優:ー
 日本語DVD化:ー

この世には一定量の邪悪が存在する−ー
そんな哲学的なテーマを突き詰めたこの作品、似たような標榜を持つ作品はあるが、
本書ではアフガンという、より具体的な題材を採っている。

ご存知ない方のために少し。
前にフォーサイスの「アフガンの男」で少し述べたが、
もちろんアフガニスタンはテロ、というか暴力の渦巻く土地だ。
但し、この国が中東と違うのは、中東の場合イスラムの原理主義者が
外国人排斥を目指しているのに対し、
アフガニスタンの場合、タリバンと政府が反目していることから、
外国勢力の援助を受ける政府に協力した、
との理由でタリバンによって村がひとつ丸ごと滅ぼされるような事態が起きているのだ。

ボコ・ハラムが跋扈するナイジェリアや、フツ族とツチ族と争い大量虐殺が起きているルワンダなど、
アフリカの国々で起きている状況に似ている。


そんな中、シリーズの主人公であるパースン空軍中佐とゴールド上級曹長が今回遭遇するのは、
まさしくタリバンによって攻撃を受けた村で、弟を拉致された少女を救出する。

その後も、パースン中佐が乗務するMi-17(旧ソ連製の輸送ヘリ)のコ・パイロットが
息子を誘拐され、殺すと脅迫されるなど、事態は組織的な小児誘拐の様相が濃厚になってくる。

どうやら、タリバンの本流から離れた分派が狂信的な企みを抱いているらしい。
少年を誘拐し、イスラム戦士として洗脳する。
その主目的は、IED(即席爆弾)の運搬役だ。
そんな目論見を許すわけにはいかない。

パースン中佐は軍の大型輸送機のパイロットで、今は知っての通り米軍がイラクやアフガンで実施している、
現地の空軍の訓練に就いている。

一方ゴールド上級曹長はパースン中佐の求めに応じアフガンにやってきたが、
過去に現地警察の訓練にあたったりした経歴から、パシュトー語に堪能だ。

二人は、統合特殊作戦軍(JSOC)に組み込まれ、
この−ー人であって、人ではないものーー狂信者を叩くべく任務に就く。


訳者あとがきにあるように、著者は一作ごとに確実にパワー・アップしている。
特に、そこいらの暗殺物の小説にあるような、映画のようなあり得ない描写や設定がない。
現実の情勢・作戦に基づいた構成、深みのあるストーリー。

路肩爆弾に耐えるクーガーなど、リアリティ満載だ。

パースンとゴールドの関係は今作も大して進歩しない。
二人はプロフェッショナルであり、感情よりも職務が優先するのだ。
この二人の今後の行方も気になるところだ。

最近小説を読むペースが速くなってしまって困っている。
持ち合わせている未読書がもう尽きてしまった。
それもそのはず、これだけの良作に恵まれれば、ページも進む。

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「脱出空域」は「脱出山脈」で衝撃デビューを果たしたトマス・W・ヤングの第2作。第1作目は主人公で輸送機の航空士、マイケル・パースン空軍少佐と陸軍のエージェント、ソフィア・ゴールド1等軍曹が撃墜されたC-130ハーキュリーズから、捕虜を連れてアフガニスタンの険しい雪山をタリバンから逃れるストーリーだったが、今度はその二人が輸送機の中で長時間缶詰にされる過程を描く。■2013年1月15日:脱出空域



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