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■2015年6月28日:ローマ亡き後の地中海世界@A

クリックして拡大  原題:タイトルと同題 (2014年日本)
 著者:塩野七生/1937- 日本生
 文庫初版:2014年8月1日 新潮文庫
 初版時価格: 1:590円/2:490円/3:550円/4:590円
 巻数:1〜4巻
 品番:し12-94-97
 管理人読了日:2015年1月27日
 映画化:未
 映画題名:
 映画主演俳優・女優:
 
 日本語DVD化:−
 

海賊という言葉を英語で表すと、簡単に思いつくだけでも
corsair,pirate,buccaneerと色々あるが、
corsairが政府公認の海賊(オスマン帝国は海賊を正式に組織化した)、
pirateは私立の海賊(個人で勝手にやっている海賊)
なのだそうで、この二つは語源はイタリア語らしい
(buccaneerはカリブの海賊)。

本書は塩野七生の最新作。かの有名な「ローマ人の物語」の続きの地中海世界が舞台で、
中東というのは現在でもイスラム国に代表されるコマッタちゃんの話題に事欠かない。

この地方というのは、標記のようにローマ帝国の分裂、西ローマ帝国の滅亡後、
文字通り昔からイスラムの海賊と、
それに対抗するキリスト教側がすったもんだ内輪もめをしながら刃を交える、
という構図を何世紀も繰り返してきた。

最初イスラム帝国の台頭、次に(十字軍の活動は一時的なものでしかない)オスマン帝国。
これに対抗するのがジェノヴァやヴェネツィアといった共和国やスペイン帝国。
そしてその後は大航海時代を経てイギリスやフランスの植民地時代へと入り、
現代のイスラムの狂信者の方々はこの時代の西洋の蛮行を活動源に挙げるが、
そもそも予言者ムハンマドおぢさんが最初から領土拡張政策を行っていたことから、
本質的にはイスラム教も西洋と変わらない。

特に現代でもソマリア等で取り上げられるが、元々アフリカ沿岸の人々は海賊が
産業化しており、宗教は大義名分を与えているに過ぎない。

というより、人間の本質的に暇ができると他国への侵略を行いたくなるらしい。
しかしながら、文明化した現代ではそんなことが許されるはずはないのである。
そのために、国境というものを決めてあるのだ。

現在のイスラム国の蛮行には、シリアに責任がある。
シリアの独立は有名な「アラビアのロレンス」が絡む”アラブの反乱”によるものであり、
協力すると見せかけ、内実は自分たちの都合の良いように進めた英仏に対する
恨みつらみもあるだろうが、かの国で一党独裁制を行うバース党は、
これまで自国内の社会不適合分子が好き勝手に悪さを働くのを野放図にしてきた。
それに引き換え、自国内の不満分子は国軍を使ってまで弾圧している。
この行動は、国家元首として筋が通らない。
国家元首は自分の立場の安定だけでなく、世界に対する自国の役割にまで気を配るべきだ。

昨今のISILの領土拡張の仕方は、開祖ムハンマドが起こしたイスラム帝国の拡大と酷似しており、
当然、ISILは現代の勢力であり兵力も機械化されているから、その拡張は驚異的なスピードを伴っており、
イスラム過激派の問題の根本はここにある。
ムハンマドは、布教のみでなく、領土拡張欲も持っていたのだ。
世界の他の宗派や政治組織がそうではないとは言わないが、
民族としてのムスリムの性向そのものが暴力的な傾向を秘めているのだ。

・・・と本題とは関係のないことをだらだら書いたが、イタリアの歴史からそんな背景が
読み取れるのが本書だ(本書にはアラブの独立の歴史までは書いてない)。

適宜小説風のくだりを盛り込みつつその辺を読みやすくまとめている著者の筆裁きに、
「ローマ人の物語」も読んでみたくなった。

ところがそんな塩野七生でもやはり軍事オタクではないので分からないことはある。
現代のイタリア海軍のアンドレア・ドーリアは駆逐艦で、
現在巡洋艦を保有するのはタイコンデロガ級を擁するアメリカだけだ。
もちろん、軍艦の艦種を決めるのは排水量だ。
巡洋艦の方が、駆逐艦より大きい。

こればっかりは、致し方ないだろう。

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