■2017年4月16日:ファイアウォール
原題:FIREWALL (2000年イギリス) | |
著者:アンディ・マクナブ Andy McNab/1959- イギリス生 |
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文庫初版:2003年4月25日 角川文庫 | |
初版時価格: 952円 | |
巻数:単巻 | |
品番:マ10-3 | |
管理人読了日:2003年5月23日 | |
映画化:未 | |
映画題名:未 | |
映画主演俳優・女優:ー | |
日本語DVD化:ー |
タイトルのファイアウォールは、ITで使われる同じ読み方の言葉と同意だ。
一時帰国した際に見つけて久しぶりに読んだのだが、
まあジョークのキツイこと。
厳冬の北極圏の寒気のように鋭いジョークがないページが存在しないくらいだ。
本書の舞台はロシア・フィンランド・エストニア等、
一部主人公の故国のイギリスも入るが、北国が中心となる。
主人公ニック・ストーンは、世界でもっとも裕福で先進的な都市、ヘルシンキに渡る。
ニックは、既に英国の情報機関からはドジが多いと見放され、
本作ではロシア・マフィアの関係の仕事を引き受ける。
しかしながら、ロシアに留まらずマフィアなどマフィアと呼ばれるが所以の、
怪しげな陰謀に本人も薄々気付いてはいながらも巻き込まれる。
半生を秘密世界の一員として生きてきた著者ならではの、
北極圏の日本人にはあまり馴染みのない国々の描写は生き生きと書かれ、
アクションや諜報活動の裏方は臨場感に満ちている。
特に感心したのは以下の一文(p487)。
「気温が低いとストレス・ホルモンが解放されるため、
膀胱が早くいっぱいになる。だから寒いときには小便がよく出るのだ。
ただし、そうすると体温が失われ、喉が渇くという問題が起きる。
暖かい液体を体内に取り込まないと、悪循環がくりかえされ、
脱水によって体の芯の温度が下がる。
芯の温度が摂氏二八.八度以下になると死ぬ。」
これを理屈で知っている人間などそうそういないだろう。
脇役とはいえニックの相棒を務めるフィンランドの”IT”オタクこと、
トムのとぼけた行動もニックのジョークにスパイスを与えている。
ニックとの連絡役を務める絶世の美女、リヴの存在感も書き忘れるわけにはいかない。
等身大のヒーローの活躍は、ドジ、というより己しか頼れない状況で、
強大な組織を敵に回して戦う以上、致し方ないのではと思うしかないような
数々の危機を切り抜け、思わず応援したくなるような場面の連続だ。
まだ活字の小さな書体の頃の一冊で、500ページを超えるボリュームなのに、
全編に渡って文字通り手に汗握る展開を維持する手腕は、
さすがとしかいいようがない。
巻末の訳者あとがきと同じような紹介文になってしまったが、
最初の2作は別として、本書以降、紹介済みの解放の日までの3作、
アンディ・マクナブの小説は個々に他の作品とは全く異なる作品舞台、
ストーリー、プロットで、読む側を飽きさせない。
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