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■2018年11月20日:ブラック・ウィドウ

クリックして拡大  原題:THE BLACK WIDOW (2016年アメリカ)
 著者:ダニエル・シルヴァ
     Daniel Silva /1960- アメリカ生
 文庫初版:2017年7月25日 ハーパーBOOKS
 第2刷時価格: 上下巻とも852円
 巻数:上下巻
 品番:
 管理人読了日:2018年8月18日
 映画化:未
 映画題名:未
 映画主演俳優・女優:ー
 日本語DVD化:ー

ブラック・ウィドウと聞くと、飛行機少年だった私は
夜間戦闘機のP-61を思い浮かべてしまうが、
ここでいうブラック・ウィドウとはスパイの綽名のこと。

久々にのめり込める小説に出会った、
と感じたのもつかの間、著者のダニエル・シルヴァは、
相当に著名な作家で、既にハーパーBOOKSのみならず、
早川書房からも何冊も邦訳されている。
私としたことが、これは盲点だった。


本作は、ここ最近ミステリ作家に格好の話題を提供している、
ISISの親玉の始末を目標とした、イスラエルのスパイ・マスターとその訓練生の物語。

現在のイスラエルという国は、20世紀に建国された国で、
かの地ではユダヤ人国家が太古から滅亡と再興を繰り返してきた。
その苦難は日本のようにずっと同一民族のまま、
政体だけが切り替わることで存続し続けている我々の理解を超えている。

私は別にユダヤ人に同情などしていないが、現代においても
日常的に街角で殺人事件が起きる国に住む困難は想像を絶する。

世間では、ヨーロッパへの難民の流入が問題になっている。
日本でも、時々不法移民が問題化するが、
受入国にとっては不法だからといって、簡単に移民を悪者扱いすることはできない。

人間は、生まれる国を選ぶことはできないからだ。


医学的には、人は0歳から1歳までの間に受けた教育・経験で、
その後の人格が形成されてしまうという。
一歩間違えればコンピューターと一緒である。

普通に考えて、イスラムのテロリストが行うような悪逆非道の数々など、
自分だったら絶対にしないと思う。
しかし、それはそのような教育を受けた西側社会の風潮下に住むがゆえであって、
我々とて、もし中東で生まれたとして、キリスト教徒を不信心者として教育されたら、
そういう信念を持ってしまうだろう。
経験していないことなど分からないものだ。

軽率に外国人だからといって排斥する考えは、人間として問題である。


外国で、しかも日本より後進国(タイ)に住んでいると、
不可思議な状況に遭遇することがある。

例えば、私の妻はよく道端に落ちているものを見つけちゃった、といって拾う。
一度などはそれが1,000バーツ札(現在のレートで約3,300〜3,400円相当の紙幣)だったこともあるのだが、
たいていはおもちゃのイアリングとか、ボタンとか、下手をすると開封していない飴玉だったりする。
さらに彼女は、さすがに飴玉の場合はそうではなかったが、
これまたたいがいの場合、捨てずに持ち帰る。

そんなものに何の価値があるのだろう、と思う。
妻の名誉のために付け加えると、このような行為に及ぶタイ人は、何も私の妻だけではない。
少なくとも妻の一族には似たような習性を持つ人が数人いる。

だがここが我々日本人には絶対に理解できない点で、
彼女らの判断は、仏教の宗教観に基づいている。
彼女らにしてみれば、彼女らに再発見された、
およそ持ち主が見つかったとて「いらないわ」と言われること間違いなしのこれらガラクタは、
例えば私の妻に発見されたことで、第2の人生を得たことになるのである。
感覚的に、捨て犬・捨て猫を拾うのと同じである。

彼らの意見では、どう見ても何の使い道もない品物でも、
彼(彼女)に発見されたのは運命であって、
保有し続ければそのうち100万バーツに化けるようなことはないだろうが、
何らかの使い道が見つかるかもしれないのである。

これは、我々日本人にはない発想だろう。
我々西側諸国の人間の悪いところは、判断が早い=頭が切れるという先入観から、
即断で自分には不要、と考えて拾わない方を選択してしまう。
世の中には、違った判断をする人もいるのだ。
自分の住む世界だけが人生ではない。


さて、そんなことはこの物語とは全然関係ないのだが、
本書は熟練の作家に書かれるがゆえ、
スパイとして潜入する工作員の養成方法など、リアル感あふれる描写がすごい。
イスラムのテロリストに心理的に取り入る手法など、 
タイのソクラテスと呼ばれる私をもうならせるほどだ。

後半に入ると、読み進む手が止まらない。
この次一時帰国したときは、ダニエル・シルヴァの小説のまとめ買い間違いなしだ。

本書は、わざとらしいくらい続編があるような終わり方をしており、
あとがきでも続編に触れられている。
と思ったら、次回作は既に日本でも発売しているらしい。

一時帰国した際、早速買っておいた。


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