■2021年4月20日:銀の枝
原題:The Silver Branch (1957年イギリス) | |
著者:ローズマリー・サトクリフ Rosemary Sutcliff/1920-1992 イギリス生 |
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文庫初版:2007年10月16日 岩波少年文庫 | |
第4刷時価格: 2017年12月15日 760円 | |
巻数:単巻 | |
品番: - | |
管理人読了日:2020年6月21日 | |
映画化: - | |
映画題名: - | |
映画主演俳優・女優: | |
日本語DVD化: |
サトクリフの小説はなんて面白いのだろう。
出だしからワクワクする。
とりわけ、その主人公たちのセリフ、
「それはどうでもよかった」
このひとことがたまらない。
要するに、目的に向かって進む男たちの生きざまを描いているのだ。
本作は、「第九軍団のワシ」と「ともしびをかかげて」の間にくる作品だ。
間というのは、時代的に繋がっており、
さらにこの後「辺境のオオカミ」というのがあるのだが、
同じブリトン人と混血の古代ローマ人「アクィラ」一族の男たちが主人公だからだ。
それで、本作品の年代だが、3世紀後期のブリタニア。
「4頭政(テトラルキア)」を敷いた皇帝ディオクレティアヌスに任命された、
西方正帝アクシミアヌスの時代に、ブリタニアで蜂起し
皇帝を名乗った「カロウシウス」なる人物がいたらしいのだが、
塩野七生は「ローマ人の物語」の中では語ってくれていない。
まあそれはともかくカロウシウスは実在したらしいし、
彼を裏切って一時的に帝位を簒奪したアレクトゥスというものも実在したそうだし、
そのアレクトゥスがカロウシウスを殺害して皇帝を名乗った後、
その軍をマクシミアヌスの後、西方正帝となったコンスタンティウスが討ったことも史実らしい。
さらにコンスタンティウスの後、皇帝となるのが、息子で例の
コンスタンティノープルを建国しニケーア公会議でキリスト教を公認した、
「大帝」、コンスタンティヌスである。
有名なローマ軍の"XP"の文字は、彼が戦闘に赴く際、
夢に出てきたとされるキリストの、ギリシャ語表記から取ったらしい。
そして次に皇帝になる子がまたコンスタンティウスといって、
親族係累を片っ端から殺した男である。
ローマ帝国も、この辺からドロドロになってくる。
さて物語とだいぶ脱線したが、初代「コンスタンティウス」の時代に生きたのが、
本書の主人公、フラヴイウスとジャスティンなのだが、
彼らはカロウシウス暗殺から、アレクトゥス討伐にかけて、
打倒「海のオオカミ(サクソン人)」目指して、
ブリタニア南部を縦横に駆け巡って活躍する。
その友情の物語と男のロマンは、絶対に面白いので、
みなさんも読んでみてほしい。
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