戻る

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

■2013年10月14日:鷲は飛び立った

クリックして拡大  原題:THE EAGLE HAS FLOWN (1991年イギリス)
 著者:ジャック・ヒギンズ
     Jack Higgins/1929- イギリス生
 文庫初版:1997年4月15日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 680円
 巻数:単巻
 品番:NVヒ1-20
 管理人読了日:1997年10月3日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

今回紹介する「鷲は飛び立った」は75年刊行の名作「鷲は舞い降りた」の続編である。
物語の中では続編だが、両作品の刊行年は15年も離れている(何でも長編50作記念らしい)。
本Blogでも、通算50作目の節目に採用した。
私も先日久しぶりに再読したのだが、初めて本作を読んだのは16年前のことだった。
歳は取りたくないものだ。

解説にも書かれているが、ヒギンズの作品は歴史上の出来事を題材にしていることが多い。
フィクションと事実が半々くらいの内容になっているのだ。
これは、作品に真実味を与え、読む側の我々にとってはより身近な物語に感じさせる。
漫画の「ゴルゴ13」に人気があるのと似ている。
たいがいの場合、未来の話や全くの虚構など面白くも何ともないものだ。
考えてみれば、フォーサイスやA.J.クィネル等、他にも巨匠と呼ばれる人々の手法は、
同様に近いところがあるだろう。


本書の登場人物は前回から引き続きクルト・シュタイナとリーアム・デヴリンに加え、
ドイツ・第三帝国のヒトラーにヒムラー、ロンメル元帥、カナリス提督(国防軍情報部の長)、
そしてSS(武装親衛隊)秘密情報部のヴァルター・シェレンベルク少将と、歴史上実在した人物が顔ぶれをそろえる。
ヒギンズがシェレンベルクについては過去にも著作に登場させているのは、
イギリス側のSOE(特殊作戦執行部)の長、ドゥガル・マンロゥ准将も一緒だ。ただしこちらは架空の人物だ。

ヒギンズはシェレンベルクを”善玉”として扱っているが、
実在の人物もどうやらそれほど熱心な親衛隊員ではなかったようである。
このシェレンベルク少将は、若くして将軍の地位にまで上り詰めた極めて頭の切れる男である。


さてストーリーについて全然触れていないが、本作は前作でお馴染みドイツ降下猟兵の伝説的な兵士、
クルト・シュタイナ中佐が実は生きてイギリスに捕えられており
(扱いが丁重であろうことはドイツ側にも分かっている)、それを救出せよとのヒムラーの命令だ。
救出してどうするのか、はハイニおじさん(ヒムラーの俗称)のみぞ知る、だが
私はここで前作の作戦はヒトラーにも内密だったのだから、どうせ秘密が漏れる前に殺すつもりなんだろう、
と勝手に先読みしてみたり。

デヴリンの活躍によりシュタイナは無事救出されるが、ヒムラーによって思いもよらぬ企みが計画されていた・・・

一見したところ悲劇のヒーローが著者の都合で復活させられるなんざ、凡庸な作品に過ぎないと思いきや、
最後にはまたわれらがヒーロー、デヴリンが痛快な決め台詞を発している。
それはヒトラー一行が朝食会議中に起きるであろう謀議を阻止するため、今まさに突入せんとする際で、
シェレンベルクに向かってこう言っている。

「闘牛士が止めを刺す段階になり、自分が生きるか死ぬかわからない瞬間のことを、

スペイン人がなんと言うか知ってるか? ”正念場”だ」

これを聞いてシェレンベルクは、「冗談を言っている時ではない、ミスタ・デヴリン」と言ってたしなめている。

思えばこのくだりは、ヒギンズ作品のコンセプトそのものなのではないか。
ヒギンズは面白くて仕方が無い。

Tweet


関連記事:

本書もまた充実した古本ラインアップを抱えるAmazonで掘り出してきた、ジャック・ヒギンズの初期の作品。ヒギンズの古い作品はどうしてこうもロマンに溢れているのだろう。■2013年7月27日:鋼の虎
ヒギンズの小説としては中期の作品で、その中でも完成度の高い活劇として仕上がっている作品を紹介する。■2013年4月23日:テロリストに薔薇を
ヒギンズの小説は私の蔵書(というほどのものではないが)の中で一番数が多いと思うのだが、その割にはあまり紹介していない。まあ勿体ぶっている部分もある反面、UPしている量ものらくらしているので、こんなペースなのだろう。■2012年10月5日:サンダーポイントの雷鳴
迫真のストーリー。そんな形容がまさにピッタリの作品。ジャック・ヒギンズの初期の作品で、この頃のヒギンズは多くの名義を持っており、本作の場合は「ジェームズ・グラハム」。■2012年6月6日:サンタマリア特命隊
ジャック・ヒギンズは私の大好きな作家である。最初は友人に映画を「あれ面白いよ」と薦められて映画とともに原作も読んだような覚えがある。というかナヴァロンの要塞もそのパターンだったのだが、今頃彼は元気だろうか(オイオイ、ごめんねK君)。ところで本書には「完全版」もあるが後付けであり、何が違うのか今となっては私も覚えていない。■2012年1月18日:鷲は舞い降りた



戻る