■2014年6月23日:最後の暗殺者
またラドラムの作品を紹介することになるとは思わなかった。
先日読み直したところ、なかなか面白かったのだ。
なんだかんだ言って好きなのだろう。
映画の方は原作と全く内容が異なり、マット・デイモンの演技以外に見るものは無いので、
ここでは紹介しない。
映画はDVDを買いに行く暇がなかったので、出張で福岡に行った際に空き時間を見つけて
どこかその辺で買ったのを覚えている。
さて本編の方だが、本作はラドラムの暗殺者「ジェイスン・ボーン」を軸とした
3部作の最終章に当たる。
シリーズの主人公、ジェイスン・ボーンは、第2作「殺戮のオデッセイ」で寄り道したものの
(中国を舞台とした第2作はあまり面白くなかった。第2作から日本の翻訳版は出版社も変わっている)、
シリーズ共通の敵である国際テロリスト、イリイッチ・ラミレス・サンチェスと最終的な決着を付ける。
ボーンは今回、旧友であるアレックス・コンクリン(CIAの工作管理官、映画では第1作で死亡)と
モー・パノフ(精神科医)の協力を得て、カルロスの第一の襲撃を交わし、
妻のマリーを甥が経営する南国のリゾートに逃がす。
ボーンは二人の協力により、CIA長官やKGBの高官と渡りを付け、次第にカルロスを追い詰めていく。
彼はパリからモスクワへとカルロスを追い、そこで宿命の対決が行われる。
ボーンはフランス語と中国語に堪能だが、ロシア語は話せない。
そこで、ソ連人と話をするのは、もっぱらロシア移民であるアレックスの役目だ。
国際諜報小説の世界では、語学力も重要なファクターだ。
自分が年齢を重ねると、読む小説の受け取り方も変わってくる。
ボーンのそそっかしくて性急なところは私も良く似ていると思う。
もちろん、私には彼ほどの特技はないが。
80年代を舞台としたシックなアメリカ小説の作風に、郷愁を誘われるのも悪くないと思った。
本作はアメリカ小説だけあってジョークも秀逸だ。特に傑作なのは、
KGBの将校であるクルプキンと、アレックスが通信書類に関して
そこに何が書いてあるのか、という話をしていて、
「政治局員が全員ゲイだという国家機密じゃないのか?」
これは読まずにはいられない。
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