■2015年1月18日:第三の銃弾
原題:THE THIRD BULLET (2013年アメリカ) | |
著者:スティーヴン・ハンター Stephen Hunter/1946- アメリカ生 |
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文庫初版:2013年12月10日 扶桑社ミステリー | |
第2刷時価格: 上下巻とも876円 | |
巻数:上下巻 | |
品番:ハ19-26,27 | |
管理人読了日:2014年8月23日 | |
映画化:未 | |
映画題名:未 | |
映画主演俳優・女優:ー | |
日本語DVD化:ー |
ジョン・F・ケネディ大統領(以下JFK)の暗殺は、誰もが知る歴史に残る謎の暗殺事件だ。
海外はもとより、日本でも陰謀説を始め様々な真相を想定した書物が上梓されている。
映画も作られた。
そもそも、政府によって2039年まで証拠物件が非公開となっている、ということ自体が怪しい。
何か政府が関係する陰謀が絡んでいるのではないかと、誰でも思いたくなる。
その主なものはケネディ大統領がベトナム戦争からの撤退を主張したことなどにより、
戦争によって利益を上げていた軍産企業の関係者や、
ベトナム戦争肯定派の政府・政治家の犯行によるものだ、というものなどがあるが、
その辺のところに暗殺から50年が経過した節目に、
銃関係に造詣の深いスティーブン・ハンターが、銃器や銃弾といった観点からメスを入れる。
ハンターの著作である「極大射程」などは、このJFK暗殺事件から材を取ったと言われ、
事実そうらしいのだが、銃に関する事柄から事件を取り上げる、
というのはマニア向けの趣向、というわけではなく、
事件に対する原因・物証の観点から、犯行に使われた凶器と、
凶器そのものだけでなくその歴史や由来を詳しく調査・解析するのは、正しいプロセスだ。
しかも、事件当時はそういったことがらが十分に調べられなかった、というから、
尚更事故調査委員会の報告は怪しい。
そして、捜査に当たるのは、ハンター作品ではお馴染み、スナイパーのボブ・リー・スワガーと
FBI捜査官、ニック・メンフィス。
そして悪役として配されるのは、前述の「極大射程」にも登場するコマッタちゃん二人組。
もっとも、実行犯は個人となっているが・・・
物語はボブの調査のプロセスと、上述の悪役の回想が交互に差し挟まれつつ進み、
この悪役、なかなか頭は良い人物のようで、ただの回想、と読み飛ばせない。
その一例をあげよう。それは歴史上の実行犯、リー・ハーヴェイ・オズワルドに向けられた言葉だ。
「きみのようなタイプの男は、いつも”どうしてか”に原因を求める。
どうしてかこうなった、どうしてかああなったのくりかえしで、自分に落ち度があるとはけっして認めず、
どうしてかはいつも、他人に落ち度があったからだとしてしまう。
人生に一度ぐらいは、”どうしてか”を忘れて、ひとつのことに集中し、
それを徹底的に、完全に、みごとにやり遂げるべきだろう」
残念だが、世の中にはこのようなタイプの人間がいることは事実だ。
もしかしたら、本書の中でそういった人間を騙すような人物を探していけば、
JFK暗殺の真犯人が見つかるのかもしれない。
本書は、ここ最近のテンポの良いストーリーが多いハンター作品とは
一風違った、スパイ小説ぶりを楽しめるだろう。
ただ、ボブが捜査に乗り出した動機はちょっとつまらなかった。
もうちょっと例えば依頼人の素性が実は・・・みたいなものだったら面白かったのに、
と感じる今日この頃である。
あと、解説を寄せている作家と自称する銃器オタクへ。
MK48は口径7.62mmだ。NATO弾なのだから、
ほんの少し銃器を知っている読者なら誰でも直ぐに気が付く。
小説を愛するものにとって、銃器のあらましを読むのも確かに面白いが、
本質的には銃器の解説などどうでもいい。小説の良し悪しは銃器の解説ではない。
こんなくだらないことをだらだらと箇条書きするイカれポンチの解説は不愉快なだけだ。
誤植だなんて言い訳は通用しないぜ。
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