■2020年9月21日:赤の女
原題:THE OTHER WOMAN (2018年アメリカ) | |
著者:ダニエル・シルヴァ Daniel Silva /1960- アメリカ生 |
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文庫初版:2019年5月20日 ハーパーBOOKS | |
第2刷時価格: 上下巻とも889円 | |
巻数:上下巻 | |
品番:M・シ/1・7 - 8 | |
管理人読了日:2020年4月26日 | |
映画化:未 | |
映画題名:未 | |
映画主演俳優・女優:ー | |
日本語DVD化:ー |
これまでのアロン・シリーズの作品がテロを題材に採っていたのとは
打って変わって、本書は本格スパイ小説である。
しかも、スパイとは別に撃ち合いをするわけではないから、
ともすれば退屈なものになりがちなところ、
本書はかのフォーサイスの作品に勝るとも劣らない、
最後までぶっ通しで読み切れること請け合いだ。
ソ連崩壊後の世代の人たちは、2重スパイといっても、
言葉でしか知らないかもしれないが、
冷戦時代の2重スパイとしては、アメリカにはオルドリッチ・エイムズがいたが、
英国には、キム・フィルビーを筆頭とする、いわゆる”ケンブリッジ・ファイブ”の存在がある。
この連中に比べれば、現代新聞紙上などで事件となる”2重スパイ”など、
ままごとにしか聞こえない。
何しろ携帯電話もパソコンもない時代である。
人々の主な連絡手段は、固定電話と郵便だった。
キム・フィルビーは大変な酒豪・かつプレイボーイとして知られ、
スパイ容疑が発覚し、ソ連亡命後のものも含めれば、4度、結婚している。
著者のシルヴァはこの辺の事情を切り口にして、本作を書き上げた。
が、どうもあとがきを読む限りでは、ずっと以前から温めてきたプロットのようである。
冒頭でも述べたように、本作は”スパイもの”であるため、
今作ではアロンの仲間のうちでも、いわゆる”実行部隊”に属する
ミハイルとケラーは目立たないが、
自身、スパイだったのじゃないのかと疑いたくなる
シルヴァの腕前で調理された、一流のフィクションをお楽しみあれ。
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