■2013年7月10日:血の絆
原題:BLOOD TIES (1984年イギリス) | |
著者:A.J. クィネル A.J. Quinnell/1940-2005 イギリス生 |
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文庫初版:1985年2月25日 集英社文庫 | |
初版時価格: 560円 | |
巻数:単巻 | |
品番:ク5-2 | |
管理人読了日:2013年4月12日 | |
映画化:未 | |
映画題名:− | |
映画主演俳優・女優:− | |
日本語DVD化:− |
A.J.クィネルのクリーシィ・シリーズとは異なる作品群で、
クィネルとしては第4作目となる本書は海洋小説の傑作。
80年代とはこういうものだ、と思わせてくれる内容に仕上がっている。
私としては中々手に入れる機会が無かった本書をAmazon様々で手に入れることができて
(クィネルの作品は集英社と新潮社から刊行されているが、
新潮社の彼の作品はいずれも初版しか発行されていない)、
プーケット滞在時に読もうと楽しみにしていたのだが、滞在前から読み始めてしまって、
到着早々に読み終わってしまった。それほど面白かった。
著者のA.J.クイネルは子供のころヘミング・ウェイの大ファンであり、クィネルは少年時代に
折しもタンザニアに来たヘミング・ウェイを訪ねたが、
「ぼくは子供が好きでない。あの餓鬼を追い出せ」とすげない対応をされ、酷く気分を害したそうである。
(ヘミング・ウェイといえばスティーブン・ハンターの「魔弾」でも良い印象で書かれていないし、
第2次大戦中に於いて残る逸話でも、とんだはみ出し者だったようである)
そして、老人の海を越える大作を著そうとしたとは明言されていないが、
本書でクリーシィはその上を目指したことは確かである(その証拠に鮫との格闘も演出する)。
クリーシィの小説はとかくセックスへの傾倒が見られるが、
それは人間同士の避けて通れぬ絆を描くことを重視した結果である。
また本書では女性が主人公であり、その傾向は普段と異なる視点から描かれている。
生まれも人種も異なる人々が、一つの目的の元に結ばれるーーー
ニューヨークで経理をしていた未亡人である主人公カースティの目的が、
南の島に冒険に出たまま消息を絶った一人息子の捜索だったとはいえ、これは65年が舞台の物語である。
今とは違って電話もTVも満足にないような世の中とあって、人と人との結びつきが非常に大切な時代。
「老人と海」がマッチョな男の孤独を体現するものとすれば、本書は”友情”の物語だろう。
モルディブからセイシェル、ザンジバル等々、アフリカで育った経験を活かした
南の島での冒険の数々は、プーケットで読むのにピッタリの小説だった。
革命の時代、ザンジバル。軍隊も介入を拒否するような状況で、
ニューヨークの経理担当の女性カースティと、インドはボンベイ出身で同じく経理だったラメッシュという男。
そしてカナダ人の若い二枚目石油掘削人ケイディ、スマトラ出身の華僑の乙女ラニー。
この素人ずくめの奇妙な取り合わせの4人と小さなヨット、マナサ号はどんな作戦を決行するのか!?
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