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■2013年11月11日:悪魔と手を組め

クリックして拡大  原題:DRINK WITH THE DEVIL (1996年イギリス)
 著者:ジャック・ヒギンズ
     Jack Higgins/1929- イギリス生
 文庫初版:2001年3月15日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 700円
 巻数:単巻
 品番:NVヒ1-27
 管理人読了日:2001年6月9日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

ヒギンズものの紹介が続いているが、大好きな作家なのでご容赦願いたい。

IRA(アイルランド共和軍)と一口に言っても、内部的には色々と派閥や分派があり、
その大きなものとして暫定派(カトリック)と王党派(プロテスタント)がある。
よく聞くシン・フェイン党というのはこの暫定派の政治組織であり、
もちろん王党派にも政治部門はある。
さらによくある話で元々は暫定派に所属していた連中の一部が、
親組織の腰が重いことに業を煮やして分離した過激派で、「真のIRA」などというものもある。

IRAといってもその活動は主として80年代であり、90年代のうちにほぼ終結しているので、
現代を生きる若者にはあまりピンと来ないかもしれないが、
要するに現代のイスラム武装組織にも様々な組織やグループがあって、
互いに言いたいことを言っているのと同じだ。

さて、本書はショーン・ディロン・シリーズの第5作目にあたり、
ヒギンズは自身が幼少期アイルランドで育った経験がありこの問題に関して造詣が豊富で、
我らが主人公ショーン・ディロンを使ってこの問題にメスを入れ、
作家の視点から組織の確執や軋轢を冷静に分析している。


ショーン・ディロンは既に私のブログでも紹介したように、
鳴り物入りで加入した英国のエージェントであり、
本書ではその彼が”ワル”だった時代の出来事が絡んでくる。
彼は金塊の強奪に関わっていたのだ。

その金塊は結局どこの組織にも渡らず終いだったのだが、
時を越えて10年後、ディロンと金塊は再び邂逅する。
さらに、内容的には過去に関連した組織が問題を蒸し返しているのだと分かる・・・

本書は人間の悲哀に満ちている。
本作品ではプロテスタントもカトリックもどちらも過激派であり、
ヒギンズはどちらが悪者、という描き方はしていない。
長年に渡って行われてきた派閥争いは、くだらない戯言で不毛なだけだという
アイルランド問題に関するヒギンズのメッセージが含まれている。


本書はハヤカワ書房から刊行されたショーン・ディロン・シリーズの最終巻にあたるが、
失礼ながらヒギンズ作品で真に”面白い”と感じたのも本書が最後だったような気がする。
この後も角川文庫にて”ショーン・ディロン”ものは続巻が続くが、
どうもマンネリ化してしまっていただけないものばかりだ。
私が言うのも生意気だが、ヒギンズももう歳だということだろう。

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