戻る

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

■2017年6月19日:逃亡のSAS特務員

 原題:BLACKOUT (2005年イギリス)
 著者:クリス・ライアン
     Chris Ryan/1961- イギリス生
 文庫初版:2006年12月25日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 900円
 巻数:単巻
 品番:ラ7-10
 管理人読了日:2007年9月25日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:−
 
 日本語DVD化:−

インターネットはテロリストの重要な武器となっている。
今ではそれが携帯電話だのTwitterだのまでが使用されている状況だが、
本書はそれより少し前、サイバーテロ黎明期に材を採った作品だ。


本書の主人公、ジョシュ・ポーターは、アリゾナの砂漠で撃たれて
意識を失っていたところを、医者である女性に助けられる。

そして、うっすらと残るジョシュの記憶では、
一緒に撃たれた少年と、逃げた少年がいた。
傷は治療の甲斐あり徐々に回復するが、記憶を喪失しており、
外傷と違ってそちらは遅々として回復しなかった。

そんな折り、世界の主要都市が全面的に停電するという事件が頻発する。
アメリカ政府の発表はテロなのかそうではないのかはっきりしない。

ジョシュは知っていた。テロではないと・・・
しかし、そこにはテロリストの企みだったり、
イギリス政府の目論みだったりが絡んでおり、記憶を失ったジョシュは混乱する。

様々な陰謀に巻き込まれる都度、次第次第に戻るジョシュの記憶。
離婚している可能性が高いが、妻子がいることも思い出した。

休む間もなく襲い掛かる襲撃のおかげで、治す暇もなく負傷するジョシュ。
さらには、女にも裏切られて、ジョシュの前途は暗澹たるものとなる。
けれども任務を果たしたジョシュには、誇りは残った。


物語の最後で、コンピューター少年がジョシュに向かってこう言う。
「未来の戦争は、僕みたいなIT坊やが、あんたたちみたいな
大人の兵隊と一緒に戦うことになるよ」

文字通り、そんな時代が来ている。

ライアン中期の佳作である。

Tweet


関連記事:

■2016年12月7日:戦場の支配者
■2016年5月11日:反撃のレスキュー・ミッション
本書の他に特殊部隊兵士のかくも過酷な任務を著すものは無いだろう。本書は、出版社が早川書房からソフトバンク文庫に変わって、クリス・ライアンの最新作である。レッドライト・ランナー抹殺任務からしばらく間が空いており心配になっていたところだったので、ほっと一安心である。■2013年9月29日:孤高のSAS戦士
クリス・ライアンの作品は処女作「襲撃待機」から始まる4作の「ジョーディ・シャープ」シリーズの他に、本作とその直前の作品「テロ資金根絶作戦」以外にシリーズものを持たない。著者は単発の作品の創作を得意とする。■2013年6月14日:抹殺部隊インクレメント
クリス・ライアンの処女作を紹介する。彼の作品は以前にも紹介したように自身の軍歴に基づいた緻密な軍事スリラーだが、ここで敢えて第一作を紹介したい。■2012年9月20日:襲撃待機
アンディ・マクナブが「ブラボー・ツー・ゼロ」の題材となった時点のマクナブの隊員の内の一人であり、ただ一人捕虜とならず逃れることに成功したクリス・ライアン。その彼も後に小説家となり、邦訳済みの最新作となるのが本作だ。■2012年3月28日:レッドライト・ランナー抹殺任務



戻る