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■2017年10月22日:暗殺者の反撃

クリックして拡大  原題:BACK BLAST (2016年アメリカ)
 著者:マーク・グリーニー
     Mark Greaney/- アメリカ生
 文庫初版:2016年7月25日 ハヤカワ文庫
 初版時価格:920円(上下巻とも)
 巻数:上下巻
 品番:NVク21-5,6
 管理人読了日:2017年4月16日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

グリーニー5作目の作品。
そしてコート・ジェントリー・シリーズとしても5作目。
プーケット滞在中に読んだ。

主人公ジェントリーはアメリカ人だが、CIAから反逆者扱いされており、
国に戻れないため今までのシリーズはアメリカから見て外国が舞台だったが、
今作ではアメリカが舞台となる。

反撃のため、帰国したのだ。
今回は前作(4作目)と第2作で登場したCIAの親玉と、
第3作で登場したジェントリーの元上司が悪玉と善玉に分かれて争う。

また第2作で登場した、ジェントリーに負けないくらい凄腕で、
ジェントリーの元指揮官、ザック・ハイタワーも登場する。
これがまたいい味のキャラクターで、四十代後半なのだが、”くそ”を繰り返す。
彼もまたCIAをクビになった口で、今回ジェントリー捕獲のため再雇用される。

さらに、今作ではジェントリーの父親まで出演する。

第3作目では少ししぼんでしまったものの、4作目、5作目の本作と
またその面白さが盛り返してきている。


本作ではジェントリーは自分に付きまとう誤った汚点を晴らすため奔走する。
曰く、「何が理由でCIAはオレの命を突け狙うのか」
そして、「安心して国に帰れるようになりたい」というごく普通の、
いや当然の願望を抱きながら。

女性としては敵側に次作でも登場が決定しているスーザン・ブルーアがいる。
この人物はいわゆる「出世タイプ」で、善悪にはとらわれない人柄なので
私など好きにはなれないのだが、そんな妨害に遭いつつ負傷しながらも
ジェントリーは目的を達成していく。

それで、ジェントリーに着せられた濡れ衣だが、よく考えてはあるものの、
ちょっとつまらない、どうでもいいようなことで命を狙われていたことが判明する。
こう書くと「なんだ、つまらない小説なのか」と思われてしまうかもしれないので弁護すると、
本書の面白さはザックがいみじくも言い放つ(上巻p382)通り、

「やつ(ジェントリーのこと)は正義の味方なんだよ。
おれたちがやつを付け狙ってるのは、命令があるからだ。
おれたちはあんなふうに悪を打ち負かしはしない」

「だけどーー」(スーザン)

「だけどもくそもない。
あんたもおれも、くそったれの同類項さ。
ジェントリーの好きなようにやらせておけば、やつは文句をいわないだろうし、
この世もすこしはましになる」

まさにその通りなのである。
この世には間違いなく善と悪が存在し、もちろん程度の差もあり
こそ泥から殺人犯までいるわけだが、人間は全て善というわけにはいかない。
殆どが善であっても、どういうわけか、時々は悪が存在するようにできている。

魔が差すとはよくいった言葉で、善行ばかり繰り返していても、
どこかで思い出したように癌が生まれる。
だから、忘れないようにたまには悪を打ち負かす、というような改善を行い、
見直していかないと、悪いところに気が付かないものなのだ。

ここまで書くと誤解されるかもしれないが、敢えて述べよう。
悪人は、悪人として生れてきたのではないかと私は考えている。
なぜなら、時には更生される人物もいるが、何をしても更生できない人間はできないからだ。

本書が胸のすくような「善が悪をぶちのめす」爽快アクションに仕上がっている所以は、
著者がこの辺の社会構造の仕組みを熟知しているためだろう。


汚点が晴れたことで、正式にというかアメリカ政府から半公認されたため、
今後は胸を張って工作員生活を満喫できることになったジェントリー。
以後のシリーズはマンネリ化するのではないか、とやや心配ではある。

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新進気鋭の作家。だがまだその素性の多くは明らかになっていない。HPもあるようなので、気なる方は一度見てみても良いだろう。■2014年5月3日:暗殺者グレイマン



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