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■2015年5月30日:虎の潜む嶺

クリックして拡大  原題:YEAR OF THE TIGER (1996年イギリス)
 著者:ジャック・ヒギンズ
     Jack Higgins/1929- イギリス生
 文庫初版:2000年12月25日 ハヤカワ文庫
 初版時価格: 580円
 巻数:単巻
 品番:NVヒ1-26
 管理人読了日:2004年5月26日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

ロシアにしろアメリカにしろ、大陸型の国家というものは、時の指導層の領土拡張欲によって
国土を広げた結果、現在の領土がある。

今の世代の人たちにはあまり知られていないことだが、
中国も国共内戦で中共(中国共産党を昔はこう呼んだ)が勝利すると、
ウィグルだのチベットだのに侵攻し、占領した。
今でこそ偉そうなことを言っているが、どこの国も過去に似たようなことをしているのだ。

ただ、日本は島国であり実力も農民一揆みたいなもので、
それが叶わなかった(叶わなくて良かったと思うが)だけで。

ヒギンズも、一時期この辺の事情を作品(鋼の虎)にしていて、
本書の主人公、ポール・シャヴァスも、邦訳されている作品では「地獄の鍵」などで
中国関係の仕事をしているが(シャヴァスの登場作品は前回取り上げた「非情の日」を参照)、
同書などはアルバニアに付け入ろうとする中国を書いたもので、
まことに中国という国は最近ではアフリカ諸国やBRICsなど、
”世界後ろめたい国連合”の代表なのだ。


さてだいぶ話が逸れたが、本書の導入部分までのところで、
シャヴァスはダライ・ラマがインドに亡命した際に手助けしたことになっており、
後にショーン・ディロンの上司となる現役時代のファーガスンの手引きで
中共支配下のチベットに潜入し、
とある英国の学者兼お医者様の博士を救出させることになるのだが、
小癪な中共軍将校、李大佐や鄭大尉、そして女スパイ・カーチャに邪魔され、
苦難の連続を経験することになる。

美人というのは刺があるものだが、しかし、シャヴァスは見抜いていた。
さすがに何度も騙されているらしいので、勉強したのだろう。

さんざんイチャイチャしておきながら、最後にカーチャを射殺したとき、
シャヴァスは李大佐に「きみは冷酷な男だな」と言われ、
「おれはプロフェッショナルだし、彼女もそうだった」ときっぱりという。
カッコいい〜(笑

中国人という奴は余計な打算が働くもので、プロに徹することができず、
結局李大佐はシャヴァスと折り合うことができなかった。

「水と油は溶け合わない」のだ(本書を読んだ方になら分かるだろう)。
やはり、ヒーローを創出するヒギンズの手腕は、他の作家とは一線を画している。


かなり短めの作品だが、欲を言えばインド陸軍のハミド少佐(私はまた邪推をして上述の
鋼の虎に登場するハーミト少佐と同一人物なのではないかと思っている)や、
小型機デ・ハヴィランド・ビーヴァーのパイロット、ケレンスキーなど、
本作のみで消えるには惜しい逸材が盛りだくさんだ。

ところで、90年代〜ハヤカワ文庫で最後に出版される「悪魔と手を組め」までの
装丁の表紙のカッコいいことといったらない。
実にナラティブで、本作品のようなドラマ性を良く表している。

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