戻る

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

■2016年3月21日:ヴァルハラ最終指令

クリックして拡大  原題:THE VALHALLA EXCHANGE (1976年イギリス)
 著者:ハリー・パタースン(ジャック・ヒギンズ)
     Harry Patterson(Jack Higgins)/1929- イギリス生
 文庫初版:1983年1月31日 ハヤカワ文庫
 第8刷時価格:2004年5月31日 740円
 巻数:単巻
 品番:NVハ3-1
 管理人読了日:2008年4月21日
 映画化:未
 映画題名:−
 映画主演俳優・女優:
 日本語DVD化:

ジャック・ヒギンズ第2次大戦もののシリーズ。
別名義での上梓である。

既に述べているように、ヒギンズ小説のテーマは大きく分けて3本あり、
それは「中国もの」・「第2次大戦もの」・「IRAもの」とあって、
ヒギンズは好んでドイツ軍兵士を善玉として扱うようなところがあり、
戦争全体の趨勢として、最終的にはドイツ側の登場人物には悲劇が襲うことが多いのだが、
一般に血も涙もないと思われがちなナチス・ドイツの兵士でも、
1個の戦士として立派な人間として扱うところが、各国から評価されている。


さて本作はドイツ側の主人公、第502SS(武装親衛隊)重戦車大隊のカール・リッター少佐、
対するアメリカ側のレインジャー隊の指揮官、ジャック・ハワード大尉の対決を描く。

二人は囚われのアメリカ軍准将、ハミルトン・カニングとSAS中佐、ジャスティン・バーを
救出、または身柄確保するために対立する。

双方はそうと知りながら物語が進行するわけではないのだが、
そこで暗躍するのがドイツの国家指導者、マルティン・ボルマン。
この人物は第2次大戦のドイツ史に詳しい方なら、誰でもご存知のナチス・ドイツの有力者で、
極め付きの曲者であり、戦後も長期にわたり南米での生存説や、
潜伏してナチス再興を画策している、などの陰謀説が囁かれていた。

ヒギンズが題材にしたのはこの陰謀説で、彼の逃亡の企てに本書の登場人物達は
いいように踊らされた、という落ちである。


中盤付近では手に汗握る展開が続き、はっきり言って読む手が止まらない。

彼ら兵士達は良くも悪くも入隊時の宣誓や、上官の命令や、祖国への使命によって
内心の葛藤とは裏腹に任務に邁進したのであり、読者には何とも理解しがたい行動であっても、
彼らにとっては何の疑問も抱く必要のない、しごく当たり前の行動だったのである。
要するに、彼らにとってそれはゲームであり、抜け出せないとともに、
単なる芝居だから、まともに真に受ける必要もないのだ。

このヒーローの孤独さ、何とも言えない哀愁がヒギンズの味であり、堪らなく切なくしてくれる。
白々しく青臭い人間ドラマでも、一流のロマンに観せるヒギンズの腕前に、
再読しながらまたもや唸らされた。

ちょっと登場人物が命を落とし過ぎのきらいはあり、二等兵が実力を発揮しまくるところなど、
「プライベート・ライアン」めいたところはあるが、
それでもヒギンズの代表作に数えられて然るべき傑作だ。

「ヴァルハラ・エクスチェンジ、ヴァルハラ・エクスチェンジ・・・」

Tweet


関連記事:

■2015年5月30日:虎の潜む嶺
■2014年8月22日:非情の日
またしてもジャック・ヒギンズの別名義の作品。本書は、「悪魔と手を組め」とプロットが非常に似ている。しかしながら舞台年代も、登場人物の動機も、全く異なる。■2014年3月26日:暴虐の大湿原
ヒギンズものの紹介が続いているが、大好きな作家なのでご容赦願いたい。■2013年11月11日:悪魔と手を組め
今回紹介する「鷲は飛び立った」は75年刊行の名作「鷲は舞い降りた」の続編である。物語の中では続編だが、両作品の刊行年は15年も離れている(何でも長編50作記念らしい)。本Blogでも、通算50作目の節目に採用した。私も先日久しぶりに再読したのだが、初めて本作を読んだのは16年前のことだった。歳は取りたくないものだ。■2013年10月14日:鷲は飛び立った
本書もまた充実した古本ラインアップを抱えるAmazonで掘り出してきた、ジャック・ヒギンズの初期の作品。ヒギンズの古い作品はどうしてこうもロマンに溢れているのだろう。■2013年7月27日:鋼の虎
ヒギンズの小説としては中期の作品で、その中でも完成度の高い活劇として仕上がっている作品を紹介する。■2013年4月23日:テロリストに薔薇を
ヒギンズの小説は私の蔵書(というほどのものではないが)の中で一番数が多いと思うのだが、その割にはあまり紹介していない。まあ勿体ぶっている部分もある反面、UPしている量ものらくらしているので、こんなペースなのだろう。■2012年10月5日:サンダーポイントの雷鳴
迫真のストーリー。そんな形容がまさにピッタリの作品。ジャック・ヒギンズの初期の作品で、この頃のヒギンズは多くの名義を持っており、本作の場合は「ジェームズ・グラハム」。■2012年6月6日:サンタマリア特命隊
ジャック・ヒギンズは私の大好きな作家である。最初は友人に映画を「あれ面白いよ」と薦められて映画とともに原作も読んだような覚えがある。というかナヴァロンの要塞もそのパターンだったのだが、今頃彼は元気だろうか(オイオイ、ごめんねK君)。ところで本書には「完全版」もあるが後付けであり、何が違うのか今となっては私も覚えていない。■2012年1月18日:鷲は舞い降りた



戻る